欠席・振替・休会・休講のルール

欠席・遅刻・振替・休会・休講は、塾や家庭教師の現場で毎週のように起き、保護者との行き違いが最も多い部分です。

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講師の急病を天災と同じ不可抗力に並べ、代替の授業もできないのに授業料を返さない。こうした規約は、民法の原則から大きく離れます。

このページの要点

  • 欠席は「前日まで・当日・無断」、原因は「生徒側・塾側・どちらでもない」に分けて、授業料と振替を決める。
  • 「やむを得ない事由」の例を示し、連絡は塾の側に記録が残る方法で受ける。
  • 未予約分を消滅させるなら、いつでも予約できる状態と予約の案内が前提。
  • 講師の急病は塾側の事情として振替・返金の対象にする(民法536条1項の考え方)。

結論:「誰の都合か」と「いつ連絡があったか」の表で決める

欠席・遅刻・振替・休会・休講は、塾や家庭教師の現場で毎週のように起きます。契約書の条としては地味ですが、保護者との行き違いが最も多いのもこの部分です。事務所では、欠席や休講のルールを「誰の都合か(生徒側・塾側・どちらでもない)」と「いつ連絡があったか(前日まで・当日・連絡なし)」の組合せの表にして、それぞれのマスに「授業料はどうなるか」「振替はあるか」を書き込む方法で組み立てています。

表にすると、規約の文言の抜けが見えます。生徒側の当日欠席は書いてあるのに講師の急病のときが書いていない、振替の期限は書いてあるのに回数の上限がない、といった抜けです。このページでは、欠席連絡の期限と「消化扱い」、予約制の未予約分、休会、講師都合と臨時休講、早退と遅刻、連絡の方法を、事務所の書類から紹介します。オンライン授業の通信障害はオンライン個別指導のページ、休会ではなく解約になった場合は中途解約と返金のページで扱います。

欠席連絡の期限と「消化扱い」

事務所が扱った書類では、欠席のルールは次のように分かれていました。

欠席・取消しの扱いの比較

場面中学受験の家庭教師総合型選抜対策の個別指導オンライン進路支援塾
前日まで(又は開始前まで)の連絡授業料は発生せず、振替を協議可能な範囲で振替開始時刻前までの連絡に限り振替。振替は翌々月末まで、月1回まで
当日の連絡授業料の50%やむを得ない事由(急病・災害・事故など)を除き1コマ受講済み開始時刻以降の連絡は受講済み
連絡なしの欠席授業料の全額1コマ受講済み受講済み(通信障害などやむを得ない事情は協議で例外)
講師側の都合授業料は発生せず、講師が速やかに振替の機会を設ける(定めなし)塾の責めによる場合は協議のうえ振替などで補填

総合型選抜対策の個別指導の欄は依頼者の原案をもとにしています。

総合型選抜対策の個別指導の原案について、事務所は2つの点をコメントしました。1つは、「やむを得ない場合」の基準が不明確であることです。風邪や部活動の大会は「やむを得ない」に入るのか、と保護者に問われたときに答えられません。急病・忌引・災害・公共交通機関の運休など、例外になる事由を例示し、診断書などの提出を求めるかどうかも決めておきます。もう1つは、欠席の連絡先が「講師へ」となっていたことです。講師個人への連絡は記録が残らず、連絡したかどうかで争いになります。チャットや専用のフォームなど、塾の側に記録が残る方法で連絡させることを勧めました。

オンライン進路支援塾の規約について事務所が示した意見書では、無断欠席を一律に受講済みとする定めが、通信障害などの不可抗力や軽い事情を考慮しない構造になっている点を指摘しました。改訂後の規約では、通信障害などのやむを得ない事情があるときは協議で例外とする旨を加えています。当日の欠席や無断欠席を受講済みとすること自体は、講師の時間を確保している以上、合理的な面があります。ただ、事業者が受け取る金額は解除に伴う違約金ではなく授業料そのものとして扱われるとしても、例外の余地を残しておくほうが、保護者の納得を得やすくなります。オンライン家庭教師の契約書では、キャンセルに係る金銭の額は消費者契約法9条の趣旨に照らし、平均的な損害の額を超えないものとする、と書きました。

振替の条件は、期限・回数・振替先の3つをそろえて書きます。教室型の塾の規約では、授業の開始前までに連絡があった場合に限り、教室の運営状況と定員の範囲内で振替を「認めることがある」とし、振替は原則として欠席日から2週間以内、その期間内に実施されなければ振替の権利を失う、と定める例があります。オンライン進路支援塾の改訂後の規約は、振替の期限を翌々月の末日まで、回数を月1回までとしています。「振替は当然の権利ではない」という一文を置く場合も、振替できる条件を満たせば振替を行うこと、振替先の授業が定員に達していて期限内に振替できない場合の扱い(期限の延長や、その回の授業料の扱い)まで書いておくと、保護者に「振替はほとんどできない」と受け取られず、説明が一貫します。家庭教師のように講師1人と生徒1人で日時を決める形なら、振替の日時は協議で決め、協議が調わない場合の期限を置く書き方が合っています。

学校の学級閉鎖や、感染症による出席停止で塾を休む場合も、生徒側のやむを得ない事情として扱うのか、通常の欠席として扱うのかを決めておきます。オンラインで授業を受けられる塾なら、教室での授業をオンラインに切り替えて実施する選択肢を規約に書いておくと、欠席にせずに済みます。天災・感染症の流行・行政指導などで授業ができない場合の扱いを「当教室が合理的に定める方法による」とだけ書くと、保護者は何も予測できません。振替を行うのか、オンラインに切り替えるのか、その回の授業料をどうするのかを、少なくとも原則だけは規約に書いておきます。

ご質問と回答 初回の相談の日程変更

前日までに連絡すれば1回だけ日程を変えられる、という定めに、急病の場合の例外を加えたいのですが。

加えられます。読み書き・ことばの相談の規約では、初回の相談の日程変更は前日の午後11時59分までの連絡で1回まで、2回目の変更・当日のキャンセル・無断のキャンセルは法令上許容される範囲で実施済みとして扱う、としたうえで、子ども又は利用者の急病その他のやむを得ない事情があり、相談の開始時刻までに連絡があった場合は、当日の日程変更として追加で1回に限り認める、という例外を置きました。

予約制の「未予約分」と、期間満了時の未消化

月に4回などの回数を決め、予約枠から生徒が予約する仕組みの塾では、予約しなかった回をどう扱うかが問題になります。オンライン進路支援塾の改訂前の規約は、所定の回数を予約しなかった未予約分は返金せず、連絡なく月が終われば未受講分の受講権は消滅する、と定めていました。事務所の意見書は、未受講分について一律に権利の消滅と返金不可とする点は、実質的に未提供の役務の対価の返還を否定するもので、特定継続的役務提供に当たるなら中途解約の規律との関係で無効と評価される可能性が高い、と指摘しています。

読み書き・ことばのオンライン相談の3か月パッケージでは、期間が終わった時点で使わなかった相談の回を返金しない条項を、条件付きで有効と整理しました。条件は、期間中いつでも予約できる状態を確保すること(事業者の都合で予約枠を絞り込まないこと)と、予約の案内や催促を適切に行うことです。この2つが満たされていれば、使わなかったのは利用者の選択の結果と評価できます。規約の条文は次のようにしました。

条文例第◯条(期間制サービスの未利用分)

1期間制サービスについて、利用期間中に含まれる相談の全部若しくは一部を利用しなかったこと又は利用期間の一部を利用しなかったことを理由とする返金、期間延長又は値引きは行わない。

2前項にかかわらず、当方は、期間中の相談について、利用者が利用期間中いつでも予約できる状態を確保するものとし、必要に応じて予約に関する案内を行う。

3利用者が予約を申し出たにもかかわらず当方の事情により予約枠を提供できなかった場合、当方は、利用期間の延長その他の代替措置を講じるものとし、利用期間の終了までに当該措置を講じることができないときは、未実施分に相当する金額を返金する。

途中解約の場合の精算とは別の場面です。途中解約は中途解約と返金のページの方法で精算します。

休会(休止):受験期の休みをどう扱うか

休会は、契約を続けたまま授業を一時的に止める仕組みです。教室型の塾の規約では、休止を始めたい月の前月の一定日までに申し出て、塾の承諾で効力が生じ、期間は原則3か月まで、休止中は授業料が発生しない(在籍管理費などは別に定めることがある)、とする例が多くあります。休止期間の満了までに再開の申出がなければ契約は終了する、と書く場合は、満了の前に塾から確認の連絡をする運用を合わせておかないと、保護者が知らないうちに退塾扱いになるおそれがあります。

子ども会員を含むダンススタジオの規約では、受験を理由とする休会を特別に扱っていました。通常の休会には月額の休会費がかかるのに対し、受験休会は最長1年まで月額の費用を無料とし、1年以内に復帰すれば再入会の費用を免除する、という定めです。塾そのものではありませんが、受験期の休みを先にルールにしておく例として参考になります。同じ規約には、届出をせずに通わなくなっても会員資格は続き、月謝の支払義務も続く、という定めもありました。届出の期限と方法を案内し、届出がない場合の扱いを入会のときに説明しておくことが前提です。

条文例第◯条(受験のための休会)

1生徒が入学試験の受験準備のために休会を希望する場合、保護者は、休会を開始する月の前月◯日までに所定の方法により申し出るものとする。

2前項の休会(以下「受験休会」という。)の期間は、最長◯か月とし、その間の授業料及び施設利用費は発生しない。

3受験休会の期間の満了の◯日前までに、当塾は、保護者に対し、再開又は退塾の意向を確認する。保護者から再開の申出がないときは、期間の満了をもって本契約は終了する。

期間・金額・確認の時期は空欄にしています。特定継続的役務提供に当たる契約では、休会の扱いを契約書面の特約欄にも反映します。

英会話の伴走プログラムでは、休会した期間の分だけ提供期間を延長し、休会の開始から一定期間内に再開の申出がない場合は、再開・中途解約などを協議する、と定めました。オンライン家庭教師の契約書では、夏休みなどの長期休業や、定期試験・入学試験の前後の日程・回数・コースの変更を、その都度協議して柔軟に調整する条を置いています。期間の延長で対応するのか、授業料の停止で対応するのか、協議で対応するのかは、料金体系に合わせて選びます。

講師の都合・臨時休講・不可抗力

講師の急病は、どの塾でも起きます。オンライン進路支援塾の改訂後の規約では、塾の責めに帰すべき事由(塾の通信障害、講師の急病その他これに準ずる事由を含む)で授業を実施できないときは、協議のうえ振替その他の合理的な方法で補填する、と定めました。講師の急病を「塾側の事情」の側に置く整理です。

事務所の改訂例 臨時休講と授業料

講師の急病・天災による休講

よくある書き方天災、感染症、交通機関の停止、講師の急病その他の事由で臨時休講とすることがあり、代替措置が講じられない場合でも、故意又は重過失がある場合を除き、授業料の減額・返還・損害賠償の責任を負わない。
改訂後講師の急病その他当塾の事情により授業を実施できない場合は、振替授業を行い、振替ができないときは当該授業の授業料を返還する。天災その他当塾及び保護者のいずれの責めにも帰することができない事由により授業を実施できない場合は、振替又はオンライン授業などの代替措置を講じ、これができないときは当該授業の授業料を請求しない。

なぜ変えるか当事者双方の責めに帰することができない事由で債務を履行できなくなったときは、債権者は反対給付の履行を拒めます(民法536条1項)。代替措置もできないのに授業料をそのまま受け取る定めは、この原則から大きく離れ、消費者契約法10条の問題になり得ます。講師の急病を不可抗力と並べるのも避けます。

0歳から6歳向けのオンライン知育講座の規約は、1か月を超える休講のときに「協議のうえ補償方法(受講期間の延長、追加レッスン、一部返金等)を提示する」と定めていました。報告書では、対応のメニューを例示したこと自体は適切としつつ、協議が調わない場合の最低限の保証がないため、利用者に最も不満がたまる場面で基準がない、と指摘しました。読み書き・ことばの相談の規約では、事業者の事情で予約日に提供できないときは代替日や代替方法を示し、合理的な代替がなければ未提供部分の料金を返すこと、期間制サービスの休止期間は延長を原則とし、延長が難しければ未経過期間の料金を返すことを書いています。

臨時休講と区別したいのが、あらかじめ予定された休講日です。年末年始やお盆、祝日、教室の点検日などは、年間の予定表で事前に示し、月謝制の授業料はそれを織り込んだ額であることを規約に書いておきます。予定表に載っていない日の休講だけを臨時休講として振替・返金の対象にすれば、「今月は授業が少なかったのに月謝が同じ」という指摘にも答えられます。曜日固定のコースで祝日が重なる月は、振替の授業日を設けるのか、その分を年間の回数の中で調整するのかも決めておきます。契約期間中の授業の回数をどう特定するかは、概要書面・契約書面のページで扱いました。

早退・遅刻・授業時間の短縮

遅刻は、生徒側の遅刻なら定刻に授業を始めたものとして扱い、終了時刻は延ばさない、という定めが一般的です。総合型選抜対策の個別指導の原案も、やむを得ない場合を除き定刻どおりに授業を始めたものとみなす、としていました。オンライン家庭教師の契約書では、遅刻で授業時間が短くなった場合の扱いはその都度協議して調整する、と柔らかい形にしています。読み書き・ことばの相談の規約では、利用者が遅れた時間は相談時間に含まれ終了時刻は原則として変えない一方、事業者が遅れた場合は所定の相談時間を確保し、確保できないときは延長か別日への振替をする、と双方向に定めました。

早退は、生徒の都合で途中退室した場合と、体調不良などで塾が帰宅させた場合を分けます。「塾の判断で授業を中断・早退させた場合も実施したものとみなし、授業料の精算は行わない」と一律に書くと、発熱した生徒を他の生徒への感染を防ぐために帰宅させた場合も、保護者にとっては授業料を払ったのに受けられなかったことになります。授業の大半を終えていれば実施扱い、そうでなければ振替を検討する、といった目安を置いておくと、現場で判断しやすくなります。体調不良で早退させるときは、保護者に連絡して迎えに来てもらうのか、保護者の了解を得て一人で帰宅させるのかも、あらかじめ届け出てもらった方法に従います。早退の扱いは授業料の問題であると同時に、子どもを引き渡す場面の安全の問題でもあるからです(安全・事故と免責のページ)。

連絡の方法と記録

欠席・振替・休会のルールをどれだけ丁寧に書いても、連絡がいつ届いたかが分からなければ使えません。規約には、連絡の方法(専用のフォーム・塾のアカウントのチャット・メールなど)と、どの時点で連絡があったものとするかを書きます。講師個人の連絡先への連絡を正式な連絡として認めないことも、講師と生徒の私的な連絡を防ぐ意味で大切です(講師・紹介・提携先との契約のページ)。

無断欠席や遅刻が続く生徒への対応も、連絡のルールとつなげておきます。オンライン家庭教師の契約書では、生徒が授業中の遵守事項に著しく違反した場合でも、まず注意や改善の指導を行い、改善がなければ相当の期間を定めて催告し、それでも改善されないときに初めて解除できる、という段階を定めました。無断欠席が続く場合も、すぐに退塾扱いにするのではなく、保護者に連絡して事情を確かめ、休会や授業の曜日の変更を提案し、それでも改善されない場合の扱いを規約に書いておく、という順序が保護者との関係を保ちます。

欠席・休会のルールを書く前の確認

  • 生徒側の欠席を、前日まで・当日・無断の3つに分け、授業料と振替の扱いを書いたか。
  • 「やむを得ない事由」の例と、証明の要否を決めたか。
  • 振替の期限と回数の上限、振替先の授業が定員に達している場合の扱いを決めたか。
  • 講師の急病・塾の設備の故障を、塾側の事情として振替・返金の対象にしたか。
  • 天災・感染症・学級閉鎖などの扱いと、長期の休講の最低限の補償を決めたか。
  • 休会の申出の期限、期間の上限、休会中の費用、満了前の確認の連絡を決めたか。
  • 欠席の連絡は生徒本人からでも受け、休会・退塾は保護者からの申出に限ると書き分けたか。

起きがちなこと

よくあるご質問

当日の欠席を「1回受講済み」として扱ってよいですか?

講師の時間を確保している以上、合理的な面はあります。ただ、急病・災害・交通機関の運休などの例外を例示し、通信障害などの事情は協議で例外にできる余地を残しておくと、保護者の納得を得やすくなります。キャンセルの金額は平均的な損害の考え方と矛盾しない範囲にします。

講師の急病で休講したとき、授業料は返さなければなりませんか?

講師の急病は塾側の事情として、振替を行い、振替ができなければその回の授業料を返すのが基本です。講師の急病を天災と並べ、代替措置がなくても授業料を返さないと書く規約は、民法536条1項の考え方から離れ、消費者契約法10条の問題になり得ます。

受験期だけ休会できる制度を作るとき、何を決めればよいですか?

申出の期限、休会の期間の上限、休会中の授業料や施設利用費の扱い、満了前の意向の確認、再開しない場合の扱いを決めます。受験休会の費用を無料にし、一定期間内の復帰なら再入会の費用を免除する例もあります。

予約しなかった回の授業を、月末で消滅させてもよいですか?

予約枠を十分に用意せずに消滅させると、未提供の役務の対価を返さないものとして問題になります。期間中いつでも予約できる状態を確保し、予約の案内をしたうえで、それでも使わなかった場合に限って返金しない、という条件を付けるのが安全です。

欠席の連絡は、講師に直接してもらってもよいですか?

講師個人への連絡は記録が残りにくく、連絡したかどうかで争いになります。塾のフォームや塾のアカウントのチャットなど、塾の側に記録が残る方法を正式な連絡方法として規約に書いておくことをお勧めします。

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