このページの要点
- 生徒が18歳未満なら保護者を契約当事者にし、生徒は授業を受ける人として定義する。
- 未成年者の同意は成立の要件に組み込む。みなし規定では取消権を封じられない(民法5条・120条)。
- 生徒本人には遵守事項を守ってもらい、受講の開始を受益の意思の表示と位置づける(民法537条3項・539条)。
- 父母の意見が違う場合に備え、申込みをした保護者の指示に従う原則を規約に書く(民法824条の2)。
結論:契約当事者は保護者に固定し、生徒本人には遵守事項と受益の意思を
学習塾・家庭教師・幼児教室の契約では、お金を払う人(保護者)と、授業を受ける人(子ども)が違います。この二者を契約書でどう位置づけるかが、トラブルの日の結論を左右します。未成年者が法定代理人の同意を得ずにした契約は取り消すことができ(民法5条1項・2項)、成年は18歳です(同法4条)。生徒本人と契約すれば、取消しのリスクを抱えます。
事務所の書類では、生徒が未成年の場合は保護者を契約当事者とし、生徒は役務を受ける人として定義し、生徒本人には授業中の遵守事項を守ってもらう形を基本にしています。このページでは、契約当事者の決め方、未成年者の同意と取消し、生徒本人の受益の意思、年齢の線引き、父母の意見が違うときの扱いを紹介します。子どもの情報の扱いは子どもの個人情報・写真のページ、子どもの安全と事故の責任は安全・事故と免責のページで扱います。
契約当事者の決め方:3つの型
塾・家庭教師・子ども向けの教室の書類を並べると、契約当事者の決め方は大きく3つの型に分かれます。
契約当事者の3つの型
| 型 | 例 | 評価 |
|---|---|---|
| 保護者が当事者、生徒は受益者 | 個人講師のオンライン家庭教師(保護者と講師が「講師が保護者の子に行う指導の委託」として締結)。中学受験の家庭教師。総合型選抜対策の塾の改訂版(契約当事者は保護者とし、保護者が約款上の義務を履行する責任を負う) | 取消しのリスクが小さく、支払・解約・連絡の窓口が一つになる。生徒本人の遵守事項は別に定める |
| 保護者と生徒が並び、連帯する | 受講生と保護者を総称して「利用者」とし、保護者が受講生の義務について連帯して責任を負う形 | 支払の責任は明確になるが、誰が解約できるのか、誰に通知すればよいのかを別に定めておく必要がある |
| 未成年本人が当事者、保護者が同意 | 高校生本人が申し込み、保護者の書面又は電子署名による同意がなければ効力を生じず、同意した保護者が金銭債務を連帯して負担する形 | 同意を契約の効力の要件にすれば機能する。取消しの規律と食い違う書き方にならないよう注意が要る |
総合型選抜対策の塾の原案は「塾生が未成年もしくは学生の場合は保護者と契約する」と書いていました。「学生」まで保護者と契約するとなると、成年に達した大学生や既卒生の契約当事者があいまいになります。改訂版では、契約当事者を保護者とし、保護者が約款に基づく義務を履行する責任を負う、と書き直しました。成年に達した受講者を受け入れるなら、本人を当事者とする場合の定めを別に置きます。
高校生が自分のスマートフォンで申し込むオンラインの講座など、未成年者本人を当事者にする型をとる場合は、保護者の同意を契約の効力の要件にし、同意の方法と記録を決めておきます。大学受験のオンライン指導の契約書では、保護者等の書面又は電子署名による同意がなければ契約は効力を生じず、同意した保護者は契約上の金銭債務を連帯して負担する、と定めていました。この型を条文にすると、次のようになります。
条文例第◯条(未成年者の申込み)
1申込者が18歳未満である場合、申込者は、法定代理人の同意を得て申し込むものとし、法定代理人は、当社所定の方法により、自ら氏名及び連絡先を記入して同意を表示する。
2当社は、前項の同意を確認した後に承諾の通知を発するものとし、同意を確認できないときは申込みを承諾しない。利用契約は、同意の確認の後、当社の承諾の通知が到達した時に成立する。
3前項の同意をした法定代理人は、本契約に基づく申込者の金銭の支払の債務について、申込者と連帯して責任を負う。
同意を成立の後で追いかけるのではなく、成立の前に確認する順序にしているのが要点です。
申込書の署名欄・記入欄の確認
- 契約当事者(保護者)の氏名・住所・連絡先と、生徒の氏名・学年・学校名を別の欄にしているか。
- 申込者が法定代理人でない場合に、法定代理人の氏名・連絡先と同意の有無を記入する欄があるか。
- 生徒が18歳以上の場合に、本人が当事者になるのか、保護者が当事者のままなのかを選ぶ欄や説明があるか。
- 緊急連絡先、送迎の方法、持病やアレルギーの申告の欄を、契約の条件とは分けて置いているか。
- 規約・プライバシーポリシーへの同意と、写真の掲載の同意を、別々のチェック欄や書面にしているか。
未成年者の同意と取消し:「みなし」では取消権は消えない
未成年者本人が当事者になる型では、法定代理人の同意の扱いが要になります。事務所では、未成年者の同意は契約の成立の要件に組み込み、成立した後に追完する形にしない、というルールを置いています。同意がないまま契約が成立し授業が始まってから同意を求めても、同意を得られなければ取り消され、授業の代金をめぐって争いになるからです。
規約に「未成年者が申し込んだ場合は、法定代理人の同意があったものとみなす」と書く例がありますが、同意の有無は事実の問題で、規約のみなし規定で取消権を封じることはできません。取り消すことができるのは、制限行為能力者本人、その代理人、承継人、同意をすることができる者です(民法120条1項)。「保護者からの通知によってのみ取り消せる」「成年に達するまでに取消しがなければ有効」といった書き方は、本人も取り消せることや、取消権の行使の期間の規律と合わない可能性があります。また、取り消された場合、制限行為能力者は、現に利益を受けている限度で返還すれば足ります(民法121条の2第3項)。「取り消されても既に提供した授業の対価を支払う」と書いても、その限度を超える部分は通りません。
年齢を偽って申し込んだ場合は、未成年者が行為能力者であると信じさせるため詐術を用いたときは取り消すことができない、という規定があります(民法21条)。ただし、申込フォームで「18歳以上ですか」にチェックさせただけで詐術といえるかは慎重に考えるべきで、年齢の確認は保護者の情報の提出とあわせて行うほうが確実です。また、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産(たとえば参考書を買うために渡したお金)は、未成年者がその目的の範囲で自由に処分できますが(民法5条3項)、何か月も続き総額が大きくなりがちな塾や講座の契約を、この例外に頼って未成年者本人と結ぶのは危うく、保護者の同意を正面から確認するのが基本です。受験コーチの団体の申込書のレビューでも、申込者を成年に限る定めがなく、未成年者の申込みは法定代理人の同意がなければ取り消され得るとして、「未成年者は法定代理人の同意を要する」旨を加えるよう勧めました。
生徒本人の遵守事項と、受益の意思
保護者が当事者の型では、生徒本人は契約の当事者ではありません。そこで、生徒に守ってもらう事項を契約にどう組み込むかが問題になります。10歳から18歳を対象とする短期の団体留学プログラムの参加規約では、保護者が参加者のために締結する契約で、参加者に役務の提供を受ける権利を与えるもの(第三者のためにする契約)と位置づけました。
条文例第◯条(契約の当事者及び参加者の遵守事項)
1参加者が申込みの日において18歳未満であるときは、保護者が、参加者のために当社と参加契約を締結する。保護者は、費用の支払、取消し、連絡その他の当社との手続の窓口となり、参加者本人が遵守事項を遵守するよう、参加者に対して事前に説明する。
2参加者は、18歳未満であっても、本規約の内容(特に遵守事項)の説明を保護者から受け、これを理解し、遵守することを申込みの際に確認するものとする。
3参加者は、参加の開始をもって、当社に対し、民法第537条第3項に定める受益の意思を表示したものとする。当社は、参加契約に基づく抗弁(本規約の定める責任の範囲及び限度を含む。)を、民法第539条により、参加者に対抗することができる。
団体留学の参加規約の定めを、塾・教室にも使える形に整理したものです。
第三者のためにする契約では、第三者(生徒)の権利は、その第三者が利益を受ける意思を表示した時に発生し(民法537条3項)、事業者は契約に基づく抗弁をその第三者に対抗できます(同法539条)。塾の規約でも、授業の受講の開始をもって受益の意思の表示とする、と書いておけば、生徒本人との関係を説明しやすくなります。ただし、事業者の不法行為によって生徒本人に生じた損害(けがなど)の賠償請求権まで、保護者との合意で当然に制限できるわけではありません(安全・事故と免責のページ)。
オンライン家庭教師の契約書では、生徒の授業中の遵守事項と、著しい違反があったときの「注意・指導→相当の期間を定めた催告→解除」という段階を定めました。総合型選抜対策の塾の改訂版では、講師やスタッフとの私的な通信、私的な関係、無断の個別受講や直接の契約、ノウハウの漏えいを禁止し、事前の通知と是正の機会を経て、重大な場合は即時に停止・解除できる形にしています(講師・紹介・提携先との契約のページ)。
保護者が契約当事者になる型では、保護者自身の協力の義務も書いておきます。団体留学の参加規約では、保護者は費用の支払・取消し・連絡などの窓口となり、参加者が遵守事項を守るよう事前に説明し、期間中も事業者の連絡と指導に協力する義務を負う、と定めました。オンライン家庭教師の契約書では、保護者と生徒は受講に必要な通信環境と機器を自らの費用と責任で準備し、無断の遅刻と欠席をせず、やむを得ない場合はできる限り事前に連絡する、としています。宿題の確認、教室への送迎、連絡帳やアプリでの連絡の確認など、家庭に担ってもらうことを契約の上で示しておくと、成果が出ないときに責任を押し付け合う事態を避けやすくなります。
年齢の線引き:18歳・同居の成人・成年に達したとき
未就学児から小学校低学年の子どもの読み書き・ことばのオンライン相談の規約では、申込者を原則として18歳以上とし、申込者が子どもの法定代理人でない場合は、子どもと同居し、家庭での生活・関わり・学習に継続的に関わっている成人に限りました。この場合、申込者はサービスの利用と子どもの個人情報の扱いについて、あらかじめ法定代理人の明示的な同意を得なければならず、事業者は同意を確認するため法定代理人の氏名・連絡先などの提出を求めることができます。申込者が18歳未満の場合や、法定代理人の同意を確認できない場合は、申込みを承諾しません。祖父母やおじ・おばが子どもの学習を見ている家庭を想定した定めです。同じ規約では、相談の対象は申込書に記載した子ども1名に限り、きょうだいなど別の子どもについて相談を希望する場合は、その子どもについて別に申し込む、とも定めています。1つの契約で誰が指導を受けられるのかを特定しておくと、きょうだいで回数を分け合う、といった使い方をめぐる行き違いを防げます。依頼者の修正の希望を受けて、当初の「同居し日常的に家庭学習を見ている成人」から「家庭での生活、関わり又は学習に継続的に関わっている成人」へ表現を広げました。
団体留学の参加規約では、申込みの日に18歳以上の参加者は本人が契約し、保護者等が参加者の債務を連帯して保証する形にしました。この保証は個人根保証契約なので極度額を定めなければ効力を生じず(民法465条の2第2項)、保証契約は書面又は電磁的記録でする必要があります(同法446条2項・3項)。規約では、保護者等が自ら氏名と連絡先を入力し、保証する債務の範囲と極度額を確認して同意したことを確認するまで承諾の通知を出さない、という順序にしています。申込みの時は18歳未満で、出発日までに18歳に達する参加者については、医療に関する同意と個人情報の扱いの同意を本人がやり直す手続も置きました。
子ども会員を含むダンススタジオの入会案内では、18歳未満の入会には保護者の同意と保護者名義の決済が必要としていました。決済の名義を保護者にそろえるのは、支払の主体と契約当事者を一致させる簡単な方法です。なお、規約で「未成年」を「20歳未満」と定義している例を今も見かけますが、成年年齢は18歳です。高校3年生の途中で18歳になる生徒がいる塾では、成年に達した後の契約の扱い(本人を当事者に切り替えるのか、保護者との契約を続けるのか)も決めておきます。既卒の受験生や大学生を受け入れる場合は、本人が成年なので本人を当事者にするのが原則ですが、授業料を保護者が払うなら、保護者を支払者として申込書に記載するのか、保証人として保証の範囲と極度額を定めるのかを決めます。
父母の意見が違うとき(共同親権)
親権は父母が共同して行うのが原則ですが、父母の一方のみが親権者であるときや、子の利益のため急迫の事情があるときなどは一方が行い(民法824条の2第1項)、監護及び教育に関する日常の行為に係る親権の行使は、父母が単独ですることができます(同条2項)。塾の入塾が日常の行為に当たるかどうかは、費用の額や内容にもよるため、規約で父母の一方が申し込む場合の扱いを決めておくと、後の紛争に巻き込まれにくくなります。
条文例第◯条(親権者が複数ある場合)
1親権者が2名以上あるときは、保護者として申込みを行う者は、他の親権者の同意を得たうえで申込みを行うものとし、当社は、その同意の有無を確認する義務を負わない。
2親権者間で意見が相違し、又は相反する指示があったときは、当社は、申込みを行った保護者の指示に従う。ただし、他の親権者が、法令に基づき単独で親権を行使することができる事項(急迫の事情がある場合を含む。)について指示をしたことを当社が確認できたときは、その指示にも従う。
3生徒の安全の確保のために必要があるときは、当社は、いずれの指示にもよらず、必要な措置をとることができる。
団体留学の参加規約の定めを、塾・教室向けに整理したものです。
あわせて、別居している親から「子どもの成績や出欠を教えてほしい」と照会されたときの扱いも決めておきます。契約当事者でない親への情報の提供は、個人情報の第三者提供の問題にもなるため、申込みをした保護者の同意や法令の根拠がない限り応じない、という整理が基本です。
未成年者本人からの連絡と、保護者への報告
中学生・高校生は、欠席や遅刻の連絡を自分ですることが多くあります。規約に「未成年者本人からの欠席の連絡は、保護者の承諾を得たものとみなす」と書く例がありますが、欠席の連絡を受け付けることと、契約上の意思表示(解約・休会・コースの変更)を受け付けることは分けて考えます。欠席の連絡は生徒本人からでも受け付け、解約・休会・料金に関わる変更は契約当事者である保護者からの申出に限る、と書き分ければ、生徒が独断で退塾届を出したような場面でも扱いがはっきりします。
保護者への報告の範囲も、規約に書いておきます。塾は、出欠や成績、面談の内容を保護者に伝えることを当然の前提にしていますが、生徒が成年に達した後は、本人の情報を本人の同意なく保護者に伝えてよいのかが問題になります。保護者が契約当事者のまま成年の生徒を指導する場合は、申込みのとき(又は18歳に達したとき)に、出欠・成績・面談の内容を保護者に報告することについて本人の同意をとっておきます。逆に、中学生・高校生から「親には言わないでほしい」と相談を受けた内容をどう扱うかも、安全に関わる場合は保護者に連絡することがある、と規約やプライバシーポリシーに書いておくと、講師が判断に迷わずに済みます。
ヒヤリングで確かめること 保護者と生徒の関係を決めるとき
契約当事者は誰ですか。生徒が18歳以上の場合はどうしますか。
保護者を当事者に固定するのか、成年の受講者は本人を当事者にするのかで、申込書の署名欄と規約の定義が変わります。
申込みをするのは、父母のどちらか、祖父母など同居の家族も認めますか。
法定代理人でない人が申し込む場合の同意の確認の方法を決めます。
父母の一方が反対している場合や、別居の親から照会があった場合はどうしますか。
申込みをした保護者の指示に従う原則と、情報の提供の範囲を規約に書いておきます。
生徒本人からの連絡は、どこまで受け付けますか。
欠席・遅刻の連絡と、解約・休会・変更の申出を分けて書きます。
在籍中に18歳になる生徒がいますか。
成年に達した後の当事者と、情報の扱いの同意をどうするかを決めます。
起きがちなこと
よくあるご質問
塾の契約は、生徒本人と保護者のどちらと結ぶべきですか?
生徒が18歳未満なら、保護者を契約当事者にし、生徒は授業を受ける人として定義するのが基本です。未成年者が法定代理人の同意なく結んだ契約は取り消すことができる(民法5条)ため、支払・解約・連絡の窓口を保護者に固定します。
規約に「未成年者の申込みは保護者の同意があったものとみなす」と書けば大丈夫ですか?
いいえ。同意の有無は事実の問題で、規約のみなし規定では取消権を封じられません。未成年者の同意は契約の成立の要件として確認し、保護者の署名や情報の提出で記録を残します。
祖父母が孫の塾を申し込むことはできますか?
規約で認めることはできます。事務所の書類では、法定代理人でない申込者は子どもと同居し家庭での生活や学習に継続的に関わっている成人に限り、法定代理人の明示的な同意を得ること、事業者が確認のため法定代理人の氏名・連絡先などを求められることを定めました。
父母の一方が入塾に反対している場合、どうすればよいですか?
親権は原則として父母が共同して行いますが、監護及び教育に関する日常の行為は単独でできます(民法824条の2)。規約で、申込みをした保護者が他の親権者の同意を得ること、意見が違う場合は申込みをした保護者の指示に従うことなどを決めておくと、事業者が紛争に巻き込まれにくくなります。
生徒本人からの退塾の申出は受け付けてよいですか?
契約当事者が保護者なら、解約や休会の申出は保護者から受けるべきです。欠席・遅刻の連絡は本人からも受け付け、解約・休会・コースの変更は保護者からの申出に限る、と規約で書き分けておきます。
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本ページは一般的な情報提供です。特定商取引法・消費者契約法・個人情報保護法などの運用は、所管の行政機関の解釈や個別の事情によって異なることがあります。事務所の改訂例・ご相談の事例として紹介している内容は、アトラス行政書士法人が作成・レビューしてきた学習塾・個別指導塾の利用規約、家庭教師の契約書・概要書面、オンライン個別指導・幼児教室・子ども向け相談サービスの規約とプライバシーポリシー、受験コーチングの紹介契約、教室の施設利用契約、学校向けプログラムの業務委託契約などを、個別の事業者が特定できない形に整理したものです。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月16日)。参考: e-Gov法令検索 / 特定商取引法ガイド(消費者庁) / 個人情報保護委員会 / 裁判所ウェブサイト