このページの要点
- 期間は契約書面を受領した日から起算して8日。書面又は電磁的記録で、発信した時に効力が生じる(特定商取引法48条1項・3項)。
- 書面に不備があれば期間は進まないと解されている。解除の妨害があれば再交付の書面から数え直す。
- 特定継続的役務提供なら販売方法を問わず適用。期間中の授業の対価も請求できない(48条6項)。
- 受講開始をクーリング・オフ期間の後に置く設計は有効。空白期間の解約ルールも置く。
結論:特定継続ならクーリング・オフは販売方法を問わず、起算点は契約書面の受領日
クーリング・オフとは、一定の期間内であれば、理由を問わず無条件で契約を解除できる制度です。学習塾・家庭教師の契約が特定商取引法の特定継続的役務提供に当たる場合、保護者は、契約書面を受け取った日から起算して8日を経過するまで、書面又は電磁的記録で契約を解除できます(特定商取引法48条1項)。
塾の規約や書面でよく見かける誤りは、次の3つです。1つ目は、期間の起点を「契約締結日」や「契約が成立した日」とすること。2つ目は、ウェブやオンラインで申し込んだ場合にはクーリング・オフがないと書くこと。3つ目は、クーリング・オフの期間中に授業を始め、その分の授業料は返さないと考えることです。いずれも、特定継続的役務提供に当たる契約では成り立ちません。このページでは、学習塾・家庭教師の契約に固有の当てはめに絞って説明します。当たるかどうかの判定は開業と特定継続的役務提供の判定のページ、8日を過ぎた後の解約は中途解約と返金のページで扱います。
法律が定める内容
特定継続的役務提供のクーリング・オフは、特定商取引法48条1項から8項までに定められています。契約書面に記載する内容もこれに沿って施行規則94条で決められており、契約書面では赤枠の中に赤字で書かなければなりません(同条3項)。
特定継続的役務提供のクーリング・オフ(特定商取引法48条)
| 項目 | 内容 | 条文 |
|---|---|---|
| 期間 | 契約書面を受領した日から起算して8日を経過するまで | 1項 |
| 方法 | 書面又は電磁的記録(メールなど)による通知 | 1項 |
| 解除の妨害があった場合 | 事業者の不実告知や威迫で誤認・困惑して解除しなかったときは、改めて交付された書面を受領した日から起算して8日 | 1項括弧書き |
| 関連商品 | 事業者が販売・代理・媒介した関連商品(書籍など)の契約も解除できる | 2項 |
| 効力の発生 | 解除の通知を発した時(発信主義) | 3項 |
| 違約金 | 損害賠償・違約金を請求できない | 4項 |
| 授業済みの分 | すでに授業をしていても、その対価を請求できない | 6項 |
| 受領済みの金銭 | 速やかに返還する | 7項 |
| 不利な特約 | これらに反する特約で受講者に不利なものは無効 | 8項 |
関連商品の返還・引取りの費用は、関連商品を販売した者の負担です(5項)。
中高一貫校の生徒を指導するオンライン家庭教師の契約書では、これらを「注意してお読みください」という枠の中に、契約書を受領した日から起算して8日、書面又は電磁的記録で、発した時に効力、既に提供した授業の対価も請求できない、受け取った金銭は速やかに返還、関連商品はない、解除の妨害があったときは改めて交付する書面の受領から8日、という順で並べました。宛先として、講師の氏名・住所・メールアドレスも枠の中に書いています。事務所では、クーリング・オフの枠の中の文言は確認済みの条文をそのまま使い、案件ごとに自作しない運用にしています。
赤枠の中に書く範囲は、施行規則94条の表で決まっています。期間と方法、解除の妨害があった場合の数え直し、発信した時に効力が生じること、損害賠償・違約金を請求できないこと、すでに提供した役務の対価も請求できないこと、受け取った金銭を速やかに全額返すことに加え、関連商品を販売している場合は、関連商品の契約も解除できること、解除の申出先が事業者と異なる場合はその旨と申出先、関連商品の解除も通知を発した時に効力を生じること、関連商品を販売した者も損害賠償・違約金を請求できないこと、関連商品の引取りの費用は販売した者の負担であること、関連商品について受け取った金銭を速やかに全額返すことまでが含まれます。教材を販売しない塾は「関連商品はありません」と枠の中に書けば足りますが、教材の販売を始めたら、この部分を書き足す必要があります。
クーリング・オフができるのは、契約の当事者です。保護者が契約当事者なら、通知を出すのも保護者です。生徒本人から「やめたい」という連絡が来た場合は、そのまま手続を進めず、保護者に意思を確認します。逆に、保護者から通知が届いたのに、生徒が授業を続けたがっているからといって受付を保留することはできません。通知は発した時に効力を生じるので、受付の担当者がいない日や休校日に届いた通知も、発信の日付で扱います。
起算点は「契約書面の受領日」:契約締結日ではない
8日の起点は、48条1項が「第42条第2項…の書面を受領した日」と定めているとおり、契約書面を受け取った日です。契約を結んだ日や申込みの日ではありません。受け取った日を1日目として数えます。たとえば、ある月の7日に書面を受け取れば、14日が8日目です。通知は発した時に効力を生じるので、8日目に発信すれば、相手に届くのが9日目以降でも有効です。
「受領した日」は、渡し方によって変わります。教室の面談の場で紙の契約書面を渡せばその日、郵送なら保護者の手元に届いた日です。PDFで渡す場合は、承諾の手続を踏んだうえで、保護者の使う電子計算機に備えられたファイルに記録された時に到達したものとみなされます(42条5項)。郵送の場合は契約を結んだ日と受領の日が数日ずれるので、規約や書面に「契約締結日から8日」と書くと、法律より短い期間を案内することになります。交付の方法ごとに、受領の日を記録する手順を決めておきます。
事務所の改訂例 クーリング・オフの起算点と方法
期間の起点と方法
なぜ変えるか起点は契約書面の受領日です(48条1項)。方法を「書面」に限ると電磁的記録による解除を排除するように読め、発信主義(3項)も書かれていません。法律より不利な特約は無効になるうえ(8項)、書面の記載事項の不備にもなります。
もう一つ大切なのは、契約書面に法律と施行規則が求める記載が欠けていると、期間はそもそも進まないと解されていることです。受験コーチング事業者と紹介会社の契約をレビューした報告書では、紹介料が確定する「成約」の定義を「契約書面受領日から起算して8日間の経過」で固定していると、書面に不備があった場合や、解除の妨害があって再交付の書面から数え直す場合に、成約が確定した後で有効なクーリング・オフ(全額返金)が行使される事態を吸収できない、と指摘しました。8日が過ぎたから安心、とはいえないのは、書面の不備が残っている場合です。
「ウェブ申込みだからクーリング・オフなし」は特定継続では通らない
通信販売(ウェブやメールで申込みを受ける取引)には、法定のクーリング・オフ制度がありません。そのため、塾や講座の規約に「インターネットでの申込みにはクーリング・オフは適用されません」と書く例があります。この書き方が正しいのは、そのサービスが特定継続的役務提供に当たらず、電話勧誘販売などにも当たらない場合だけです。読み書き・ことばのオンライン相談の規約では、特定継続的役務提供に当たらないことを確認したうえで「通信販売による申込みには、法令に特別の定めがある場合を除き、特定商取引法上のクーリング・オフ制度は適用されません」と書きました。
これに対して、オンラインの家庭教師や個別指導塾が特定継続的役務提供に当たるなら、申込みがウェブでも、電話でも、教室での面談でも、48条のクーリング・オフがかかります。特定継続的役務提供の規律は販売方法を問わないからです。オンラインの受験指導の契約書に「クーリング・オフは訪問販売・電話勧誘販売の場合に限り、通信販売・インターネット契約には適用されない」と書いたとしても、指導の中身が受験のための学力の教授で、期間と金額の基準を満たすなら、この書き方は48条8項で無効になり、しかも契約書面の記載の不備として期間が進まない原因にもなります。
特定継続的役務提供に当たらない幼児教室でも、事業者がZoomなどのオンライン面談のURLを送って勧誘し、面談の後にLINEやウェブで申し込ませる流れは、電話勧誘販売に当たり得ます。この場合、電話勧誘販売のクーリング・オフ(24条。法定の書面を受領した日から8日)がかかり得ます。0歳から6歳向けのオンライン知育講座の規約をレビューした報告書では、規約が「電話勧誘販売その他クーリング・オフの対象となる取引に該当する場合」と条件付きで書いていた点について、主な販売経路(オンライン面談を経た申込み)では当たる可能性が高いのに、事業者の側から「当たらない」と主張する余地を残す書き方で、利用者からは権利があるのかどうかが規約だけでは分からず、消費者契約法3条1項1号(条項を明確で平易なものにする努力義務)の要請にも沿わない、と指摘しました。販売の経路ごとの整理はオンライン個別指導のページで扱います。
受講開始日をクーリング・オフ期間の後に置く設計
クーリング・オフをされると、すでに行った授業の対価も請求できません(48条6項)。このため、期間中に授業を始めると、事業者は無償で授業をしたことになり得ます。オンライン知育講座の案件では、依頼者が改定で「受講開始を書面交付から8日が経過した後」に設定し、事務所は報告書で、クーリング・オフ期間中の役務提供を避ける良い設計だと評価しました。教材を発送する講座なら、発送もこの期間の後にします。
書面交付から受講開始までの時期の区分
②の区間の解約のルールが規約に書かれていないと、別の問題が生じます(中途解約と返金のページ参照)。
この設計には注意点が一つあります。受講開始を後ろに置くと、クーリング・オフ期間が終わってから受講開始までの間に、授業を1回も受けていない「空白期間」が生まれます。この区間はクーリング・オフの対象ではありませんが、授業はまだ提供していないので、受講開始後と同じ精算のルールを当てはめることはできません。規約には「受講開始前の解約」という区分を独立して置き、差し引くものを具体的に書いておきます。精算の書き方は中途解約と返金のページで扱います。
受講開始日そのものも、契約の上で特定しておきます。オンライン知育講座の規約は、受講開始日を「当社が利用者ごとに公式LINE等で通知する日」とだけ定めていました。報告書では、契約書面に受講開始日の記入欄があることで実務上は補われているものの、規約だけでは開始日が特定されないと指摘しています。受講開始日は、契約書面に日付で書くか、「契約書面の交付の日から起算して◯日を経過した日以後の最初の授業日」のように、誰が読んでも同じ日になる書き方にします。
受験が近い生徒の保護者から「すぐにでも授業を始めてほしい」と頼まれることもあります。クーリング・オフ期間中に授業を始めること自体は禁止されていませんが、期間中に解除されれば、行った授業の対価も請求できません(48条6項)。「期間中に授業を始めた場合はクーリング・オフできない」「期間中の授業料は返金しない」といった合意をしても、48条8項で無効です。期間中に始める場合は、この点を保護者に説明したうえで、塾の側がそのリスクを引き受ける判断として行います。
教材と関連商品の扱い
塾が教材を販売し、それが政令の定める関連商品に当たる場合、クーリング・オフは教材の売買契約にも及びます(48条2項)。学習塾型・家庭教師型の関連商品は、書籍、音や映像やプログラムを記録した物(DVDや学習ソフトなど)、ファクシミリ装置とテレビ電話装置です(施行令29条1項・別表第五第三号)。引き渡した教材の引取費用は販売した側の負担です(48条5項)。オンライン知育講座の改定では、クーリング・オフの場合の全額返金と教材の返送費用を事業者が負担する旨を明記しました。
エステの化粧品のように、使ったり消費したりした関連商品はクーリング・オフできないという例外(48条2項ただし書)は、政令でエステと美容医療の一部の商品に限られており(施行令29条2項)、学習塾・家庭教師の関連商品には置かれていません。「教材に書き込みをした場合は実費を差し引いて返金する」という定めは、クーリング・オフの場面では法律より不利な特約に当たり得ます(48条8項)。
一方で、教材を塾が販売せず、生徒が書店などで市販の問題集を自分で買う形なら、その購入は塾の契約とは別で、クーリング・オフの対象になりません。英会話の伴走プログラムの書面では、講師が案内する市販書籍を受講者が自分の負担で直接購入する場合があり、その購入は講師の販売・代理・媒介によるものではない、と明記しました。教材の扱いは月謝・入塾金・教材費のページで詳しく扱います。
書面の交付に問題があったときの立て直し
契約書面の交付そのものに問題があった場合、期間がいつまでも確定しないおそれがあります。オンライン知育講座の案件では、最初の1件目の契約で、法令が求める承諾の手続を経ないまま契約書面をPDFで渡していました。依頼者は「書面を受け取った日を1日目として8日目まで」という正しい数え方で期間を案内していましたが、事務所は、承諾の手続を欠く電子交付では法定の書面交付がまだ完了していない、したがって期間が進んでいない、と主張される余地が残ると伝えました。
ご質問と回答 1件目の契約のクーリング・オフ期間
書面を受け取った日から数えて、もう期間は終わっていると考えてよいですか。
数え方そのものは正しいです。ただ、この1件は承諾の手続を経ずに電子交付しているため、書面の交付が完了しておらず期間が進んでいない、と主張される余地があります。確実にするには、同じ内容の契約書面を紙に出力して郵送で交付し直し、その書面が届いた日から8日間をクーリング・オフ期間として案内し直すことをお勧めします。期間が数日延びるだけで、期間がいつまでも確定しないリスクを消すことができます。
同じ考え方は、契約書面の記載に不備が見つかった場合にも当てはまります。不備を直した契約書面を改めて交付し、その受領日から8日を案内し直せば、その時点から期間を確定させられます。不備を放置したまま受講を続けるほど、後から全額の返金を求められたときの負担が大きくなります。
クーリング・オフの通知を受けたときの社内の手順も、あらかじめ決めておきます。
- 通知の受付:メール・LINE・郵便のどれで届いても受け付け、受け取った日と、分かる場合は発信の日を記録する。
- 期間の確認:契約書面を交付した日(電子交付の場合はファイルに記録された日)から数えて8日以内に発信されたかを確かめる。書面に不備がなかったかも確かめる。
- 授業と教材:以後の授業の予約を取り消し、関連商品の教材を販売していれば、販売した側の費用で引き取る。
- 返金:受け取った金銭を、授業をした分も含めて速やかに全額返す。差し引くものはない。
- 関係先への連絡:紹介パートナーに紹介料を払っている場合は、契約で決めた方法で紹介料の精算を行う。分割払いの決済サービスを使っている場合は、決済の取消しの手続をとる。
- 保護者への通知:解除を受け付けたこと、返金の額と時期を、記録が残る方法で伝える。
ヒヤリングで確かめること クーリング・オフの条を作る前に
契約書面は、紙で渡しますか、PDFで渡しますか。交付した日をどう記録しますか。
8日の起点になるため、交付の日を確実に記録できる方法を決めます。PDFなら事前の承諾の手続が必要です。
受講の開始日は、契約書面を渡した日から何日後に置きますか。
クーリング・オフ期間の後に置くなら、その間の空白期間の解約のルールも決めます。
教材を販売しますか。発送はいつですか。
関連商品に当たるなら、赤枠の記載と、引取りの費用の負担を決めます。発送を期間の後に置く方法もあります。
申込みの経路は、教室・ウェブ・オンライン面談・電話のどれですか。
特定継続的役務提供に当たらない場合でも、電話勧誘販売などのクーリング・オフがかかるかを経路ごとに確かめます。
返金の方法は、振込・カードの取消し・決済サービスの返金のどれですか。
「速やかに全額」を実行できる手順と、返金の手数料を差し引かないことを確かめます。
起きがちなこと
よくあるご質問
学習塾のクーリング・オフは、いつから8日間ですか?
特定継続的役務提供に当たる場合、契約書面を受け取った日から起算して8日間です。契約を結んだ日や申し込んだ日ではありません。受け取った日を1日目として数え、8日目までに通知を発信すれば有効です。
オンラインで申し込んだ塾の契約にも、クーリング・オフはありますか?
特定継続的役務提供に当たる家庭教師・学習塾の契約なら、申込みの方法を問わずクーリング・オフがあります。当たらないサービスでウェブから自ら申し込んだ場合は通信販売としてクーリング・オフはありませんが、オンライン面談で勧誘された場合は電話勧誘販売に当たり得ます。
クーリング・オフの前に受けた授業の分は、払わなくてよいのですか?
特定継続的役務提供のクーリング・オフでは、事業者はすでに提供した授業の対価も請求できず、受け取った金銭は速やかに返します(特定商取引法48条6項・7項)。そのため受講開始をクーリング・オフ期間の後に置く設計がとられます。
塾で買った教材もクーリング・オフできますか?
塾が販売・代理・媒介した書籍やDVDなどが関連商品に当たる場合は、教材の契約も解除できます。学習塾・家庭教師の関連商品には、使用・消費したら解除できないという例外は置かれていません。生徒が書店で自分で買った市販の問題集は対象外です。
8日を過ぎてもクーリング・オフされることはありますか?
あります。契約書面に法定の記載が欠けていると期間が進まないと解されているほか、事業者の不実告知や威迫で解除しなかった場合は、改めて交付された書面の受領日から8日になります。承諾の手続を経ない電子交付も、期間が進んでいないと主張される原因になります。
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本ページは一般的な情報提供です。特定商取引法・消費者契約法・個人情報保護法などの運用は、所管の行政機関の解釈や個別の事情によって異なることがあります。事務所の改訂例・ご相談の事例として紹介している内容は、アトラス行政書士法人が作成・レビューしてきた学習塾・個別指導塾の利用規約、家庭教師の契約書・概要書面、オンライン個別指導・幼児教室・子ども向け相談サービスの規約とプライバシーポリシー、受験コーチングの紹介契約、教室の施設利用契約、学校向けプログラムの業務委託契約などを、個別の事業者が特定できない形に整理したものです。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月16日)。参考: e-Gov法令検索 / 特定商取引法ガイド(消費者庁) / 個人情報保護委員会 / 裁判所ウェブサイト