塾講師との業務委託契約書

塾が講師に授業や教材作成を任せるとき、題名を業務委託にするだけでは足りません。条文の書き方と運用の実態、教材の権利、報酬、子どもの安全を、別々に決めます。

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『甲の指示に従い、甲の定める時間割と方法で授業を行う』と書いた委託契約書は、雇用の書き方に近づきます。教材の権利も、決めなければ作った講師のものです。

このページの要点

  • 雇用と読まれやすい条文(指示に従う、断れない、一律の兼業禁止、『共同して運営』)を、枠と目的を示す書き方に改める。
  • 教材は、譲渡・利用許諾・共有のどの型にするかを決める。譲渡なら27条・28条の権利の明記(著作権法61条2項)と人格権の不行使が要る。
  • コマ単価と生徒都合のキャンセルの報酬は、あらかじめ明示する。個人の講師にはフリーランス法の明示・支払期日・減額禁止が関わる。
  • こども性暴力防止法(2026年12月25日施行予定)は、塾には認定を受けることができる制度。講師との契約に、確認への協力・研修・報告の条項を準備する。

結論:「委託」と名付けても雇用と読まれる条文を避け、教材の権利と報酬と安全を別々に決める

塾が講師に授業や教材作成を任せるとき、雇用契約ではなく業務委託契約を使う場面があります。個別指導のコマ単位の授業、オンライン授業、動画教材の制作などです。業務委託契約書で押さえる論点は、おおむね5つに分けられます。雇用と読まれやすい条文、講師が作った教材の権利、コマ単価と生徒都合のキャンセルの報酬、守秘義務と直接取引の禁止、そして子どもの安全です。子どもの安全の論点には、2026年12月25日に施行される予定の、こども性暴力防止法に基づく認定を受ける場合の契約条項が含まれます。

この5つは、それぞれ別の法律や別の考え方に支えられています。たとえば、雇用と読まれるかどうかは、契約書の題名ではなく働き方の実態で判断されます。教材の権利は著作権法の定めが出発点です。報酬は、塾が従業員を使い、講師が従業員を使わない個人であれば、フリーランス法が関わります。子どもの安全は、契約条項だけでなく塾の運営の仕組みの問題です。この順番で、一般的な書き方を紹介します。

このページが扱うのは、塾と、個人または小さな会社の講師との業務委託契約です。アルバイトとして雇う講師の労務は扱いません。生徒・保護者と講師が直接結ぶ契約の禁止は講師・紹介・提携先のページ、個人の家庭教師が保護者と結ぶ契約書は家庭教師の契約書のページで扱いました。 講師が合宿や遠征に引率として同行するときの扱いについては、合宿・遠征の参加規約のページで詳しく説明しています。

雇用と読まれやすい条文と、書き方を変える点

労働基準法9条は、労働者を「事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」と定めています。業務委託契約で働く講師が、これに当たるかどうかは、契約書の題名では決まりません。指揮監督のもとで働いているか、報酬が労務そのものの対価と見られるか、働き方の自由がどの程度あるか、といった実態が総合的に見られると説明されるのが一般的です。契約書は、その実態を正確に書いたものでなければならず、また、実態を契約書に合わせて整えていく必要もあります。労働者に当たるか否かの個別の判断や、雇用に切り替える場合の労務の整え方は、このページでは扱いません。

委託契約書で、雇用と読まれやすい代表的な条文には、次のようなものがあります。

書き方の例(一般的な例) 雇用と読まれやすい条文の書き換え

授業の進め方

よくある書き方乙は、甲の指示に従い、甲の定める時間割、教室及び方法により授業を行う。
整えた書き方乙は、甲が示す授業の対象となる生徒、科目、授業の目的及びコマの枠の範囲内で、自らの判断と方法により授業を行う。甲は、授業の目的の達成に必要な範囲で要望を述べることができ、乙はこれに誠実に対応する。

なぜ変えるか時間と場所と方法のすべてを塾が決める書き方は、指揮監督のもとで働く人の書き方に近づきます。塾が決めるのは枠と目的にとどめ、授業の進め方は講師の判断に残します。

日程の決め方

よくある書き方乙は、甲が割り当てた授業を断ることができない。
整えた書き方甲は、授業の候補を乙に提示し、乙は自己の都合に応じて引き受けるかどうかを決める。引き受けた授業については、乙は、やむを得ない場合を除き実施する。

なぜ変えるか個々の仕事を引き受けるかどうかの自由は、委託として扱われるための重要な要素の1つです。引き受けた後の責任は、別に書きます。

兼業の制限

よくある書き方乙は、甲の事前の承諾なく、他の塾その他の教育事業に従事してはならない。
整えた書き方乙は、本契約の期間中及び終了後◯か月間、甲の生徒及びその保護者に対し、本契約によらずに直接授業を提供してはならない。乙が他の事業に従事することは妨げない。

なぜ変えるか一般的な兼業禁止は、雇用のような拘束に見えます。塾が守りたいのは、自塾の生徒を直接取り込まれないことです。守る対象を、その点に絞ります。

共同作業の表現

よくある書き方甲及び乙は、共同して授業を運営する。
整えた書き方甲は生徒の募集、授業枠の提供及び生徒・保護者との連絡を行い、乙は授業及び乙が作成する教材の制作を行う。双方の役割は次条のとおりとする。

なぜ変えるか『共同して』という表現は、責任の所在が曖昧になり、雇用のような一体の関係にも、共同事業にも読めます。役割分担を具体的に書いて、曖昧さをなくします。

書き方を整えるだけでは足りません。実際の運用が条文と食い違うと、運用の方が実態として重視されます。たとえば、条文では授業の進め方を講師に任せているのに、現場では授業の中身が細かく指示されている、という状況です。契約書は運用の枠組みを定めるものなので、運用を変えないまま条文だけを整えても、意味が薄くなります。

あらかじめ確かめること 講師との契約を組み立てる前に

  1. 講師は、授業の依頼を断ることができますか。実際に断った講師はいますか。

    個々の仕事を引き受けるかの自由があるかを、条文と運用の両方で確かめるためです。

  2. 講師は、授業の時間や場所を自分で選べますか。塾が決めるのはどこまでですか。

    枠と目的は塾が決め、方法は講師が決める、という線引きが実際に成り立つかを確かめます。

  3. 講師は、他の塾や自分の教室で教えていますか。教えてよいですか。

    兼業を制限する範囲を、直接取引の禁止に絞れるかを決めるためです。

  4. 報酬は、授業の時間や回数に応じた単価ですか。研修や会議の時間にも払いますか。

    研修や会議への参加を義務づけると、雇用に近づきます。参加の扱いと報酬を、最初に決めます。

講師が作った教材・動画の権利:譲渡か、許諾か、塾と講師のどちらに残すか

講師が作ったプリント、問題、解説動画の著作権は、特に定めなければ、作った講師のものです(著作権法17条1項)。雇用であれば、一定の条件を満たす場合に、法人等が著作者になる職務著作の規定があります(同法15条)。しかし、業務委託の講師が作った教材について、この規定を当然の前提にはできません。塾がその教材を使い続けたいのであれば、契約書で権利の扱いを決めておく必要があります。

教材の権利の扱いの3つの型

型内容塾にとって講師にとって
塾に譲渡する著作権を塾に譲渡し、塾が自由に使う。契約終了後も使い続けられる。最も安定する。自分が作った教材を、自分では使えなくなるおそれがある。
講師に残し、塾に利用を許諾する著作権は講師に残し、塾は授業の目的で使える。契約が終われば使えなくなる範囲が出る。他の塾でも同じ教材を使える。
共有にする著作権を塾と講師の共有にする。共有著作権は共有者全員の合意がないと行使できない(著作権法65条2項)。扱いにくい。同じく自由には使えない。

共有は、後の利用で合意が必要になるため、避ける設計が一般的です。

譲渡する型を選ぶ場合には、細かな点を2つ押さえます。1つは、著作権法27条(翻案権等)と28条(二次的著作物の利用に関する原著作者の権利)です。著作権を譲渡する契約でこれらの権利を譲渡の目的として特に挙げていないときは、これらの権利は譲渡した人に留保されたものと推定されます(同法61条2項)。塾が教材を改変して使う予定なら、27条と28条の権利も含めて譲渡する、と明記します。もう1つは、著作者人格権です。著作者人格権は著作者の一身に専属し、譲渡できません(同法59条)。そのため、譲渡では、講師が著作者人格権を行使しないという約束(不行使特約)を併せて書きます。

条文例第◯条(教材等の著作権)

1乙が本業務の遂行にあたり作成した教材、プリント、問題、解説動画その他の成果物(以下「本教材」という。)に関する著作権(著作権法第27条及び第28条の権利を含む。)は、本教材が作成された時に、乙から甲に譲渡される。

2乙は、甲及び甲の指定する者に対し、本教材について著作者人格権を行使しない。

3前二項にかかわらず、乙が本契約の前から有していた教材及びノウハウに関する権利は乙に留保される。乙は、これらを本教材に組み込む場合、甲が本契約の目的の範囲で使用することを許諾する。

4乙は、本教材を甲以外の第三者に提供し、又は本契約の目的以外の目的で使用してはならない。ただし、甲が書面で承諾した場合は、この限りでない。

どの型を選ぶかで第1項と第4項が変わります。講師に権利を残す型では、第1項は利用許諾の条文に置き換えます。

契約が終わった後の教材の扱いも、決めておく必要があります。塾が譲渡を受ける型でも、講師が自分の経験を発信するときに、自分の作った教材をそのまま再利用できないと困ります。講師の側から、自分のポートフォリオとしての紹介や、一般的な解法の解説といった範囲の利用を認めてほしいという要望が出ることがあります。この場合、塾の教材の複製や配布は認めず、講師が自分の指導の実績を示す目的で、生徒や保護者が特定されない形で概要を紹介することだけを認める、といった線引きが考えられます。また、他社の教材や市販の問題集を講師が使うときの権利処理(引用や複製の範囲)は、塾の責任でなく講師の責任とする、と書いておきます。

動画教材の場合は、制作した講師だけでなく、出演する講師、編集する第三者、使用する音楽や画像など、権利者が増えます。出演と制作を別の契約に分ける、第三者の素材は権利処理済みのものに限るなど、条文で整理します。

報酬:コマ単価、生徒都合のキャンセル、振替と、フリーランス法

講師の報酬は、授業1コマあたりの単価で決める例が多く見られます。コマ単価の契約書では、単価と並んで、授業の準備時間、教材の作成、研修、生徒との連絡対応の時間が報酬に含まれるのか、別なのかを書いておきます。含まれるのかどうかが曖昧だと、講師の側では、働いた時間の割に報酬が少ないと感じ、塾の側では、追加の費用請求が出ることになります。

契約書で行き違いが出やすいのが、生徒の都合で授業が取り消されたときの講師の報酬です。たとえば、前日までに連絡があった場合、当日の直前に連絡があった場合、連絡なく欠席した場合、のそれぞれで報酬を全額・一部・なしにするのか、それとも振替にするのかを、事前に決めておきます。決めた内容は、講師にとって契約の条件そのものなので、後から運用で変えると、報酬の減額と見られるおそれがあります。

生徒都合のキャンセルと講師の報酬の決め方の例

場面報酬の例考え方
前日までに連絡があった報酬なし。振替の授業があれば、その授業の報酬講師が他の仕事を入れられた可能性があるため。
当日、授業の直前に連絡があった所定の割合の報酬講師が時間を確保し、準備をしている場合に配慮。
連絡のない欠席全額時間を確保したのに実施できなかったため。
塾の事情で授業が実施できなかった全額または振替講師の責めによらない場合の扱いを明示。

割合や区分は事業の実態に合わせて決め、条文または別紙に書きます。

講師が従業員を使わない個人(または代表者1人だけの法人)であれば、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)が関わります(同法2条1項・6項)。守るべきことの名宛人は条ごとに異なり、条件の明示(3条)は、特定受託事業者に業務委託をする業務委託事業者であれば、塾が従業員を使うかどうかを問わず負います。支払期日(4条)、報酬の減額の禁止など(5条)、解除の予告(16条)は、従業員を使用する特定業務委託事業者である塾が負います。おおむね次のとおりです。

  • 書面等による条件の明示(業務委託事業者):業務委託をしたときは直ちに、給付の内容(授業の内容、コマの枠)、報酬の額、支払期日などを、書面または電磁的方法で明示します(3条1項)。コマ単価と、キャンセル時の報酬の扱いは、この明示事項に入れておきます。
  • 支払期日(特定業務委託事業者):役務の提供を受けた日から60日の期間内で、できる限り短い期間内に定めます(4条1項)。毎月末日締め・翌月末日払いのような月単位の締切制度は、公正取引委員会のフリーランス法Q&A(Q48)で、受領から2か月以内として運用し問題としない扱いが示されています。翌々月の支払にすると60日の枠を超えます。
  • 報酬の減額の禁止など(特定業務委託事業者):1か月以上の期間の業務委託では、相手の責めに帰すべき事由がないのに報酬の額を減ずること、通常支払われる対価に比べて著しく低い報酬の額を不当に定めることなどが禁止されます(5条1項2号・4号。役務提供委託では、受領拒否と返品に関する1号・3号は適用されません。同項括弧書き。対象期間は施行令1条)。生徒都合のキャンセルで報酬を払わない設計は、あらかじめ条件として明示した場合と、後から減らした場合とで評価が異なり得ますが、運用の解釈は所管官庁の公表資料で確認が必要です。
  • 契約を解除するときの予告(特定業務委託事業者):6か月以上の継続的な業務委託では、契約の解除(更新しない場合を含む)をするときは、原則として少なくとも30日前までに予告します(16条1項。継続的業務委託の期間は13条1項と施行令3条)。

これらは法律上の義務であり、契約書の条文で排除はできません。なお、講師が従業員を使っている場合や、一定の規模の法人であれば、この法律の対象にならないことがあります。対象かどうかは、講師の個別の状況で確認します。

よくある疑問と答え 報酬の条文

授業の準備時間は、報酬に含まれると書いてよいですか。

単価に含めると決めること自体は可能ですが、含める範囲(教材の準備、前回の振り返り、生徒との連絡)を具体的に書いておく必要があります。追加の教材作成や研修は、別の報酬とする書き方もあります。

キャンセルの場合の報酬を、運用で決めてもよいですか。

運用で決めると、後から報酬の減額と見られるおそれがあります。区分と金額を条文または別紙に書き、講師に明示しておきます。

守秘義務の存続と、生徒・保護者との直接取引・引抜きの禁止

講師は、授業を通じて、生徒の成績や志望校、家庭の事情、保護者の連絡先など、多くの個人情報を知ります。講師との契約で守秘義務を定める場合、期間を区切るかどうかが問題になります。一般的な営業上の秘密は、契約終了から一定期間とする例が多い一方、生徒・保護者の個人情報は、期間を区切らずに存続させる書き方が適しています。個人情報は時間が経っても価値が下がらず、漏れたときの影響が子どもに及ぶためです。守秘義務の対象には、成績・志望校・学習履歴・家庭の事情を含めて書き、講師が自分の端末やメモに保存した情報は、契約終了時に返還・消去することも条文にします。塾の側の個人情報の扱いは、子どもの個人情報のページで扱いました。

生徒・保護者との直接取引の禁止も、契約書に必要です。塾に在籍する生徒を、講師が個人的に引き受けて、塾を通さずに指導する、という行為です。直接取引の禁止の範囲と期間、違反したときの対応は、講師・紹介・提携先のページで詳しく述べています。講師との契約書では、そのうち次の3点を確かめます。

  • 禁止する行為の特定:塾に在籍する生徒、または過去一定期間に在籍した生徒・保護者に対し、塾を通さずに有償で指導を提供すること、連絡先を教えて個別に誘うことなど、具体的に書きます。
  • 期間と範囲の限度:契約終了後の禁止期間は、塾の利益を守るために必要な範囲に限ります。長すぎる期間や、広すぎる範囲は、講師の仕事を奪うものとして、有効性が争われるおそれがあります。
  • 保護者から直接依頼されたとき:保護者の側から講師に直接依頼があった場合の扱いも、条文に書きます。塾に報告する、断る、塾を通して引き受ける、のいずれかを決めておきます。

引抜きの禁止は、講師が他の講師を勧誘する場合です。塾に所属する他の講師に対して、同じ条件で自分の側に移るよう働きかける行為を、契約期間中と終了後の一定期間、禁止する定めが置かれることがあります。ただし、禁止の範囲が広すぎれば、有効性が争われるおそれがあることは、直接取引の禁止と同じです。

子どもの安全:講師との契約に置く条項と、日本版DBS(こども性暴力防止法)

子どもに接する仕事では、講師との契約に、子どもの安全に関する条項を置く動きが広がっています。一対一の指導が行われる個別指導やオンライン授業では、教室の環境や運営の仕組みを整えるとともに、講師の側にも約束してもらうことが必要です。具体的な運営の仕組み(被害の申出の経路、一対一の時間の限度)は安全・事故と免責のページ、オンライン授業での扱いはオンライン個別指導のページに書きました。ここでは、講師との契約書の条文に落とし込む点に絞ります。

講師に約束してもらう基本の条項

  • 生徒への身体的接触、不適切な言動、私的な連絡先の交換、SNSでの個別のやり取りを行わないこと。
  • 授業は、塾が指定する場所または方法(録画のあるオンライン授業など)で行い、生徒と密室で二人きりにならないこと。
  • 子どもに関する被害や不適切な行為の疑いを知ったときは、直ちに塾に報告すること。また、塾が行う事実確認の調査に協力すること。
  • 塾が実施する子どもの安全に関する研修を受講すること。
  • 上記に違反した場合に、塾が授業の割り当てを停止し、または契約を解除できること。解除の前に、事実の確認のために業務を一時停止できること。

日本版DBSの概要と、塾・講師の契約に関わる部分

こども性暴力防止法(正式名称は、学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律)は、2026年12月25日に施行される予定です(施行令・施行規則の附則に定められています)。現時点では本体の条文は未施行で、以下は、e-Govで公開されている施行予定の条文と、施行令・施行規則で確認できる範囲に基づいて整理しています。法律は、子どもに接する仕事に就く人について、過去の特定の性犯罪の前科の有無を、国が確認する仕組みを設けることとしています(犯罪事実確認、法4条・26条・33条〜35条)。

施行後は、学校、認定こども園、児童福祉施設などの「学校設置者等」には、犯罪事実確認が義務づけられます(4条1項)。これに対し、塾や習い事などの民間教育保育等事業者には、義務ではなく、認定を受けることができる制度が設けられています(19条1項)。認定を受けた事業者(認定事業者)には、その事業に従事する教育保育等従事者について、犯罪事実確認などの義務が生じます(26条)。認定を受けない事業者に、この法律に基づく犯罪事実確認の義務は生じません。

自分の塾が、法律の対象となる民間教育事業に当たるかを確かめる順番

  1. STEP1

    児童等(学校に在学する児童・生徒など)に対して、技芸または知識の教授を行う事業か。

    はい次の段へ。いいえこの法律の民間教育事業には当たらない。
  2. STEP2

    その技芸または知識を習得するための標準的な修業期間が、6か月以上か(法2条5項3号イ)。

    はい次の段へ。いいえ当たらない。短期の講習だけの事業は、この点で外れる可能性がある。
  3. STEP3

    児童等に対して、対面による指導を行っているか(同号ロ)。

    はい次の段へ。いいえオンラインだけの指導は、この要件を満たさないと読める。
  4. STEP4

    事業者が事業所その他、事業を行うために用意する場所で指導しているか(同号ハ)。

    はい次の段へ。いいえ講師が生徒の自宅に出向く家庭教師型は、この要件を満たさないと読める。
  5. STEP5

    教授を行う者が、政令で定める人数(3人)以上いるか(同号ニ、施行令1条)。

    はい民間教育事業に当たる。認定を受けることができる。いいえ当たらない。個人の講師が1人で運営する教室などは、この点で外れる。

条文の文言にもとづく整理です。個々の事業が該当するかの最終的な判断は、条文と内閣府令、所管官庁の公表資料で確かめてください。

認定を受ける場合、事業者は、児童対象性暴力等対処規程(防止措置、疑いがあるときの調査、被害児童の保護と支援を定めたもの)を作成し、犯罪事実確認を適切に実施する体制を整え、子どもが相談しやすい措置と、従事者による性暴力のおそれを早期に把握する措置(児童等の日常的な観察、面談や質問票など)を実施し、従事者に研修を受講させます(20条1項、内閣府令8条・9条・19条)。認定を受けた事業者は、広告などに認定を示す表示を付けられます(23条1項)。施行後は、認定を受けていない者が、その表示や紛らわしい表示を付けることは禁止され、違反には1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金(併科あり)が定められています(23条2項、45条1項)。認定を受けていない塾が、広告で『性犯罪の前歴を確認済み』と読める表示をするときは、この規定に触れないかの確認が欠かせません。

講師との業務委託契約で最も気になるのは、委託の講師が、法律の対象になる「教育保育等従事者」に当たるかどうかです。法2条6項3号は、民間教育事業に従事する者のうち、児童等に対して技芸または知識の教授を行うものを挙げており、条文の文言上は、雇用された人に限る書き方になっていません。一方、犯罪事実確認書の交付申請の際は、申請書に、雇用契約の契約書の写しその他の当該従事者を業務に従事させることを証する書類を添付するとされています(33条4項1号)。業務委託の講師について、どの書類で足りるかなどの運用は、内閣府令や所管官庁の資料で確認が必要で、ここでは断定しません。認定を受ける予定の塾は、業務委託の講師が確認の対象に含まれる前提で、契約書の条文を準備しておくのが安全です。

条文例第◯条(児童対象性暴力等の防止に関する協力)

1乙は、甲が児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律に基づく犯罪事実確認を行う場合、その実施に必要な書類の提出その他の協力をする。乙が協力しないときは、甲は、乙に対する授業の割り当てを行わず、又は本契約を解除することができる。

2乙は、甲が犯罪事実確認により知り得た情報を、同法の定める目的以外の目的で利用し、又は第三者に開示しない。乙は、自己に関する確認結果について、甲が、同法の定める範囲で必要な措置を講じることに同意する。

3乙は、甲が実施する児童対象性暴力等の防止に関する研修を受講する。

4乙は、児童対象性暴力等又はその疑いがある行為を知ったときは、直ちに甲に報告し、甲が行う調査に協力する。甲は、調査の期間中、乙に対する授業の割り当てを停止することができる。

5本契約が終了した場合、甲は、同法の定めるところにより、乙に関する犯罪事実確認記録等を廃棄し、又は消去する。

法律の施行は2026年12月25日の予定で、本条は認定を受ける場合を想定した例です。認定を受けない場合も、第3項と第4項は子どもの安全の条項として置けます。

確認を行った塾の側にも、施行後は守るべき義務が生じます。確認の結果の記録は、確認の目的以外には利用できず、第三者に提供してはなりません(12条)。確認書の記載内容をみだりに他人に知らせた者には、罰則があります(39条、45条2項)。記録は、確認日から5年を経過した日の属する年度の末日から30日を経過する日までに廃棄または消去します(38条1項)。従事者が離職したときは、離職の日から30日が経過する日までに廃棄または消去します(同条2項1号)。講師との契約を終了するときは、これらの廃棄・消去の手順も、塾の内部の手続として整えておきます。

日本版DBSを見据えた講師契約の点検

  • 自分の塾が、6か月以上・対面・事業所で・教授者3人以上、という要件に当たるかを確かめたか。
  • 認定を受けるか受けないかを決めたか。受けない場合も、子どもの安全に関する条項を契約書に置いているか。
  • 業務委託の講師にも、確認への協力、研修の受講、疑いを知ったときの報告と調査への協力を求める条文があるか。
  • 確認結果の目的外利用の禁止と、廃棄・消去の手順が、契約と内部の手続の両方に書かれているか。
  • 広告やウェブサイトで、認定を受けていないのに、認定と紛らわしい表示をしていないか。

起きがちなこと

よくあるご質問

塾講師との業務委託契約書で、雇用と見られないためには、何に気をつければよいですか?

契約書の題名ではなく働き方の実態で判断されます。時間割・場所・方法をすべて塾が決める書き方を避け、塾が示すのは枠と目的にとどめます。授業を引き受けるかどうかの自由や、他の仕事を持てることも書いておきます。ただし、運用が条文と食い違えば、実態の方が見られます。

講師が作った教材の著作権は、誰のものになりますか?

特に定めなければ、作った講師のものです(著作権法17条1項)。塾が使い続けたいなら、譲渡するか、講師に残して利用を許諾するかを契約書で決めます。譲渡するときは、27条・28条の権利を挙げて書かないと講師に残ったものと推定されること(61条2項)と、著作者人格権は譲渡できないため不行使の約束が必要なこと(59条)に注意します。

生徒の都合で授業が取り消されたとき、講師への報酬はどうしますか?

前日までの連絡、直前の連絡、連絡なしの欠席、塾の事情による中止、といった区分ごとに、全額・一部・なし・振替を、あらかじめ条文または別紙に書いて講師に明示します。フリーランス法の対象となる場合は、書面等による条件の明示と、報酬の減額の禁止も確かめます。

日本版DBSは、すべての塾に義務づけられますか?

いいえ。施行後、学校や児童福祉施設などの学校設置者等には義務が生じますが、塾などの民間教育保育等事業者は、認定を受けることができる制度で、義務ではありません。法律の対象となる民間教育事業には、標準的な修業期間が6か月以上、対面、事業者が用意する場所、教授者が3人以上、という要件があります。施行は2026年12月25日の予定です。

業務委託の講師にも、犯罪事実確認を求められますか?

認定を受ける事業者は、教育保育等従事者として業務に従事させようとする者について確認を行います。条文の文言は雇用に限っていませんが、申請書に添付する書類の定め(33条4項1号)などの運用は、内閣府令や所管官庁の資料で確認が必要です。認定を受ける予定があるなら、契約書に確認への協力の条項を準備しておくと安全です。

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本ページは一般的な情報提供です。特定商取引法・消費者契約法・個人情報保護法などの運用は、所管の行政機関の解釈や個別の事情によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 特定商取引法ガイド(消費者庁) / 個人情報保護委員会 / 裁判所ウェブサイト

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