月謝・入塾金・教材費・講習費

塾・家庭教師の料金は、月謝だけではありません。費目ごとに、何の対価で、いつ支払義務が生じ、解約や休会のときにどう扱うかを書き分けます。

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塾が問題集を販売すると、特定継続的役務提供ではそれが関連商品になり、クーリング・オフや中途解約が教材の契約にも及びます。

このページの要点

  • 契約書面には費目ごとの明細と合計を書くので、料金の条も費目ごとに組む(施行規則94条)。
  • 入塾金も、特定継続的役務提供なら中途解約の上限の中で考える。
  • 書籍・DVD・学習ソフトなどを塾が販売・代理・媒介すれば関連商品(施行令29条・別表第五)。
  • 自社で2か月以上・3回以上に分けて受け取ると割賦販売法の割賦販売に当たる。

結論:費目ごとに「何の対価か」「いつ発生し、いつ返すか」を書く

塾・家庭教師の料金は、月謝だけではありません。入塾金、授業料、施設利用費、教材費、季節講習の受講料、模試や検定の費用、訪問の交通費が並び、支払方法も前払い・後払い・一括・分割と分かれます。料金の条で大切なのは、金額そのものよりも、費目ごとに「何の対価なのか」「いつ支払義務が生じるのか」「解約や休会のときにどう扱うのか」を書き分けることです。

特定継続的役務提供に当たる契約では、契約書面に入学金・入会金・授業料・施設整備費・検定料・購入が必要な商品の価格などを費目ごとに分けて書き、合計を示す必要があります(特定商取引法施行規則94条)。料金の条を費目ごとに組んでおけば、契約書面もそのまま作れます。書面の作り方は概要書面・契約書面のページ、解約のときの精算は中途解約と返金のページで扱います。

料金体系ごとの書き方

事務所が扱ってきた塾・家庭教師・子ども向けの教室の料金体系を並べると、次のようになります。どの方式でも、契約の期間と支払の総額が、特定継続的役務提供の判定(2か月超・5万円超)に関わる点は同じです。

塾・家庭教師の料金体系と書き方のポイント

方式例書き方のポイント
月謝+入会金+1か月の自動更新高校生向けのオンライン進路支援塾翌月分を前月の一定日までに前払い。更新日と退会の期限を特定する
入塾金+月額授業料+施設利用費教室型の個別指導塾施設利用費が何の負担か(教室の維持費・光熱費など)を書く。初月の按分、休会中の扱い
回数券のコース一括総合型選抜対策の1対1指導回数券の有効期限と、期限が切れたときの扱い。中途解約の精算の単価
従量課金・後払い/月額固定個人講師のオンライン家庭教師単価×実施回数。最低回数を保証しない旨。月額固定の回数
時間単価+交通費中学受験の訪問・オンライン家庭教師授業時間の選択肢、交通費の地域区分、オンラインは交通費なし
一定期間の講座一括+月額の継続プラン0〜6歳向けのオンライン知育講座継続プランの更新日、申込みの時期で変わる料金の条件
期間のパッケージ読み書き・ことばの3か月の相談中身の項目ごとの配分額を決め、途中解約の返金の基礎にする

回数券の有効期限は、特に注意が必要です。総合型選抜対策の個別指導では、依頼者の原案は「期限の定めなく回数券を消化するまで利用可能」でした。期限のない回数券は、何年も後に「まだ残っている回数で授業を」と求められる可能性を残します。一方で、期限を短く切って「期限が過ぎた回数券は失効し、返金しない」と書くと、未提供の役務の対価を保持することになり、消費者契約法や特定商取引法49条との関係が問題になります。有効期限を契約期間と結びつけるなら、期間中に予約できる機会を確保すること、期間内に使い切れなかった分の扱い(延長・返金)を決めることがセットです。

月謝制の塾では、支払の時期と、月の途中の入塾・退塾の扱いを決めます。教室型の塾の規約では、授業料と施設利用費を毎月一定日までに翌月分を前払いし、月の途中から利用を始める場合の初月は所定の方法で按分し、初月分は翌月分と合わせて払う、と定める例があります。前払いの月謝は、特定継続的役務提供の判定に関わる「支払う金額」の一部であり、退塾したときの精算の対象にもなります。月の途中で解約しても当月分は返さず、支払期限が来ている翌月分も払う義務を免れない、という定めを置く場合は注意が必要です。翌月分は、解約の時点ではまだ1回も授業を提供していない分です。特定継続的役務提供に当たる契約では49条の上限との関係が問題になり、当たらない契約でも消費者契約法9条1項1号の平均的な損害を超えるおそれがあるため、解約の連絡の締切と、翌月分を返すかどうかの関係を整理し直す必要があります。

支払が遅れたときの定めも、消費者契約法の枠の中で書きます。遅延損害金の予定は年14.6%を超える部分が無効です(同法9条1項2号)。「未払金の回収に要した費用(弁護士費用を含む)は利用者の負担とする」「利用者は塾の承諾なく相殺を主張できない」「一度でも遅れたら期限の利益を失い全額を直ちに支払う」といった定めは、月謝制の契約では将来の月謝まで一括で請求できるかのように読まれ、消費者の義務を一方的に重くする条項として同法10条の観点から問題になり得ます。振込手数料をどちらが負担するか、現金払いに手数料をかけるかどうかも、金額と一緒に書いておきます。

授業時間の延長の扱いも料金の条に関わります。読み書き・ことばの相談の規約では、後の予約に支障がなく短い延長であれば追加料金なしで延長することがあり、延長料金は設定しない、ただし相談の分量が所定の時間に対して多すぎる場合は、相談のうえ別の相談の購入を案内することがある、と定めました。受験直前の個別指導では、授業が予定の時間を超えることがよくあります。延長したら延長料金を取るのか、取らないのか、取るならいくらで何分単位なのかを書いておかないと、月末の請求のときに保護者と講師の認識がずれます。

入会金・入塾金:何の対価かを書く

入会金・入塾金は、「入塾したら返さないお金」として扱われがちです。教室型の塾の規約では、入塾金を「契約の締結に伴う事務処理、学籍登録、指導体制の準備その他の初期費用の対価」と性格づけて、利用開始後は返還しないとする例があります。性格づけを書くこと自体は大切です。最高裁判所平成18年11月27日判決は、大学の入学金を「入学し得る地位」を得るための対価として返還義務を否定する一方、授業料等については、入学前の解除なら平均的な損害は原則として存在しないとしました。入会金と、授業料の前払分を分けて考える根拠になります。

ただし、特定継続的役務提供に当たる契約では、入塾金も中途解約の上限の中で考えます。提供開始前の解約で事業者が請求できるのは学習塾型1万1千円、家庭教師型2万円まで(遅延損害金を除く)なので、これを超える入塾金を、受講の準備を始めたことを理由に返さない、とすることはできません。入塾金を無料にしている総合型選抜対策の塾では、規約に「今後入塾金を設定する場合は事前に通知する」と書きました。入塾金を設ける場合は、契約書面の費目の明細にも載せます。

入塾の前にテストを受けてもらい、受験料を取る塾もあります。施行規則94条が契約書面の費目として挙げる「入学又は入会のための試験に係る検定料」は、まさにこの費用です。入塾テストの受験料を取るなら、それが何の対価で、入塾しなかった場合や入塾後に解約した場合にどう扱うのかを決め、入塾した生徒の契約書面には費目として載せます。

きょうだいで通う場合の割引や、紹介による割引も、条件と解約のときの扱いを書いておきます。0歳から6歳向けのオンライン知育講座では、きょうだいの2人目の料金を低く設定していました。割引は、誰に・いつ・何に対して適用するのかを明示し、途中で1人が退塾した場合に残る1人の料金をどうするのかも決めておきます。中途解約の精算は契約のときに実際に適用した単価で行うのが原則なので(中途解約と返金のページ)、解約したときだけ割引を取り消して通常の料金で計算し直すような定めは置かないようにします。

自動更新・継続プランの表示

月謝制の塾や、講座の後の月額の継続プランでは、更新の仕組みを具体的に書きます。0歳から6歳向けのオンライン知育講座では、6か月の講座の終了後に月額の継続プランを設け、終了から1か月以内に申し込めば低い料金、それ以降や再加入は高い料金という二段の料金にしていました。報告書では、①「更新日」の定義がなく、退会の期限(更新日の前日)が特定できない、②低い料金を強調し、高い料金になる条件を同じ場所で明瞭に示さないと、景品表示法5条2号(取引条件を著しく有利と誤認させる表示)のおそれがある、③オンラインで申込みを受けるなら、最終確認画面に分量・対価・支払の時期と方法・提供の時期・解約に関する事項を表示する必要があり(特定商取引法12条の6第1項)、自動更新であることや解約の期限と方法もそこで分かるようにしておく必要がある、と指摘しました。依頼者は改訂版で、更新日を毎月の応当日として特定しました。

退会の連絡の方法を公式LINEだけに限っていた点についても、LINEを使えない利用者のためにメールなどの代わりの手段を案内しておくのが安全だと伝えました。消費者契約法3条1項4号は、消費者の求めに応じて解除権の行使に必要な情報を提供する努力義務を定めています。月額の継続プランで「支払済みの分は返金しない、日割りもしない」とすること自体は、1か月単位の役務なら許容され得る設計ですが、それは更新日と退会の期限がはっきりしていることが前提です。

自動更新の契約には、終わりの時点も書いておきます。オンライン知育講座の継続プランは、毎月自動更新し、子どもが小学校に入学する年の3月31日までを終期としていました。対象の年齢や学年に区切りのある塾・教室では、中学3年生の3月、高校3年生の3月など、どの時点で自動的に終了するのか、終了の前に保護者へ案内するのかを決めておくと、卒業した後も引落しが続いていた、という行き違いを防げます。

教材・関連商品:塾が売るのか、生徒が買うのか

教材の扱いは、塾が販売するのか、塾が立て替えて実費を請求するのか、生徒が自分で買うのかで、法律上の扱いが変わります。特定継続的役務提供に当たる契約で、塾が販売・代理・媒介する教材が政令の関連商品(書籍、音や映像やプログラムを記録した物、ファクシミリ装置・テレビ電話装置。施行令29条1項・別表第五第三号)に当たると、クーリング・オフと中途解約が教材の契約にも及びます(特定商取引法48条2項・49条5項)。中途解約の場合、関連商品について請求できる額にも上限があります(49条6項)。

教材の3つの扱い方

扱い方例注意点
塾・講師は販売しない講師が市販書籍を案内し、生徒が書店で買う「講師の販売・代理・媒介によるものではない」と書面に明記する。概要書面・契約書面に「関連商品なし」と書ける
塾が原則無償で用意する授業のテキストは塾が用意し、有償教材だけ別に案内有償教材を使う場合は、内容・金額・請求時期・支払方法を事前に示し、同意を得て実費を請求する
塾が発注・立替えをする生徒の申込みに基づいて塾が問題集を発注する注文の成立時期、立替金の請求、所有権の移転時期。関連商品に当たればクーリング・オフ・中途解約の対象

総合型選抜対策の塾では、依頼者の原案は「テキストは当塾がすべて用意する」とだけ書いていました。事務所は、今後有償のテキストが発生したときに備えて「別途案内のうえ実費を請求する」といった文言が望ましいと提案し、改訂版では、原則として無償で提供し、特定のコースで有償教材を使う場合は内容・金額・請求時期・支払方法を事前に文書又は電子通知で示し、同意を得て実費を負担してもらう形にしました。中学受験の家庭教師の契約書では、教材は原則として保護者側の責任と負担で準備し、市販教材の購入が必要な場合は事前に協議する、としています。

塾が発注・立替えをする場合は、注文がいつ成立するか(生徒の申込みに基づき塾が発注した時点)、発注後のキャンセルの可否、代金は実費であること、所有権が代金の支払で移ること、デジタル教材の無断複製の禁止を書いておきます。ただし、関連商品に当たる教材について「発注後はいかなる場合も返品できない」と書いても、クーリング・オフや中途解約の場面ではその定めは働きません。

季節講習・特別講習・体験授業

夏期講習・冬期講習・直前講習は、通常の授業とは別に申込みを受けることが多くあります。規約には、講習の申込みが通常の契約とは別の契約として成立するのか、通常の契約の追加なのかを書きます。ここがあいまいだと、通常の契約を中途解約したときに、講習の受講料まで精算の対象に含めるのかが決まりません。あわせて、申込み後のキャンセルの扱い、最少催行人数に満たない場合の中止と受講料の返還、天災や感染症で実施できない場合の扱いを決めます。講習開始後は一切返金しない、と書く場合も、塾の責めによる中止のときは除くことを明記し、消費者契約法9条1項1号の平均的な損害の考え方と矛盾しないようにします。

体験授業は、無償で回数の上限を決め(たとえば2回まで)、入塾を義務付けるものではないことを書きます。体験授業も、塾が子どもを預かる時間であることは通常の授業と変わりません。体験中の事故について「故意又は重大な過失がある場合を除き責任を負わない」と書くと、軽い過失の場合の全部免除として消費者契約法8条1項で無効になり得ます(安全・事故と免責のページ)。

分割払いと料金の改定

分割払いは、誰が分割の信用を与えるかで扱いが変わります。カード会社の分割払いを使い、塾には一括で入金される方式なら、分割の契約は保護者とカード会社の間で成立し、支払総額や各回の支払額などの情報を提供する義務を負うのはカード会社です(割賦販売法30条の2の3第1項)。ただし塾の側も、カードの分割払いで授業を提供する契約を結んだときは、現金で払う場合の価格、提供の時期、契約の解除に関する定めなどの情報を保護者に提供し、求められれば書面を交付する義務を負います(同条5項・6項)。総合型選抜対策の塾の書面では、分割はカード会社の機能を使い、塾はカード会社から一括で受領すること、分割の回数や手数料はカード会社の定めによることを書き、分割手数料のために総支払額が一括払いより高くなることがある旨の追記も提案しました。

これに対して、決済サービスが毎月カードで決済し、塾にも毎月入金される方式は、塾自身が代金を分割で受け取る形になります。2か月以上にわたり3回以上に分けて受け取れば割賦販売法の割賦販売に当たり(同法2条1項1号)、家庭教師型・学習塾型の学力の教授や「技芸又は知識の教授」は指定役務です(同法施行令1条3項・別表第一の三)。割賦販売の条件の表示、契約書面への賦払金などの記載、支払が遅れたときの催告の手続など、追加の対応が必要になります。月謝のように月ごとに完結する料金と、総額を分割して払う料金では扱いが異なり得るため、ヒヤリングでどちらなのかを確かめます。

料金の改定は、新しく申し込む人と、すでに契約している人を分けて考えます。読み書き・ことばの相談の規約では、料金の変更は変更後の申込みに適用し、既に成立した契約には契約成立時の料金を適用すると定め、期間制のサービスの途中で値上げはしない運用にしました。月謝制の塾で既存の生徒の授業料も改定する場合は、定型約款の変更の要件(民法548条の4)を満たすことと、改定後の料金・適用開始月の事前の周知が必要です(塾の利用規約のページ)。教室型の塾の規約では、授業料と施設利用費を、経済情勢の変動や運営コストの増加などの合理的な理由があるときに改定でき、改定後の料金と適用開始月を原則として2か月前までに通知する、と書く例がありました。通知の期間を置くだけでなく、値上げの前に負担なく退塾できる機会を確保しておくと、変更の合理性を説明しやすくなります。

ヒヤリングで確かめること 料金の条を作る前に

  1. 費目は何がありますか(入塾金・授業料・施設利用費・教材費・講習費・模試や検定の費用・交通費)。

    費目ごとに何の対価か、いつ支払義務が生じるか、休会や解約のときにどう扱うかを決め、契約書面の明細にも使います。

  2. 支払は前払いですか、後払いですか。締め日・支払日・初月の扱いはどうしますか。

    前払いで5万円を超えるなら前払取引の手当てが必要です。初月の按分の方法も書きます。

  3. 分割払いの選択肢はありますか。カード会社の分割ですか、自社で分けて受け取りますか。

    自社で2か月以上・3回以上に分けて受け取ると割賦販売法の割賦販売に当たります。

  4. 教材は塾が販売しますか、立て替えますか、生徒が自分で買いますか。

    関連商品に当たるかどうかで、クーリング・オフと中途解約の扱いが変わります。

  5. 季節講習は、通常の契約とは別に申し込みますか。キャンセル料はありますか。

    別の契約か追加かを決め、キャンセル料は平均的な損害の範囲に収めます。

  6. 過去に料金を改定したことはありますか。既存の生徒にも適用しましたか。

    改定の手続と、既存の契約への適用の可否を規約に書きます。

起きがちなこと

よくあるご質問

入塾金は、どんな場合でも返さなくてよいですか?

入塾金を何の対価かと性格づけることは大切ですが、特定継続的役務提供に当たる契約では、提供開始前の解約で請求できるのは学習塾型1万1千円・家庭教師型2万円までです(遅延損害金を除く)。名目が入塾金でも、上限を超える部分は返すことになると考えて設計します。

施設利用費は授業料と分けて書いたほうがよいですか?

分けて書くのがよいです。契約書面には費目ごとの明細と合計を書く必要があり、休会中や月の途中の解約で、授業料と施設利用費を同じに扱うのか別に扱うのかも決めやすくなります。

塾で使う問題集を塾が販売すると、何か問題がありますか?

特定継続的役務提供に当たる契約で、書籍などの関連商品を塾が販売・代理・媒介すると、クーリング・オフや中途解約が教材の契約にも及びます。市販の書籍を生徒が自分で買う形にし、講師の販売・代理・媒介ではないと明記すれば、関連商品なしと書けます。

夏期講習は、通常の授業と別の契約にしたほうがよいですか?

どちらでも構いませんが、規約でどちらなのかを決めておくことが大切です。決めていないと、通常の契約を解約したときに講習の受講料を精算の対象に含めるかが争いになります。中止や最少催行人数の扱いも書いておきます。

月謝を決済サービスで毎月引き落とすのは、割賦販売になりますか?

月ごとに完結する月謝をその月に払う形と、一括の料金を分割して払う形では扱いが異なり得ます。総額の代金を2か月以上にわたり3回以上に分けて受け取るなら、割賦販売法の割賦販売に当たり、条件の表示や書面などの義務が生じます。

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