このページの要点
- 宿泊やバスの手配を塾が引き受けて代金を受け取るかが旅行業法の入口で、「旅行業者ではありません」と書くだけでは線は動かない。
- 参加費は「指導費」と「宿泊・食事・移動の費用」に分けて示し、取消料もその区分と宿泊先の取消規定に合わせて設計する。
- 引率の責任は、集合から解散までを時間帯で区切り、各時間帯で塾が行うことを書いて決める。夜間は免責ではなく体制を書く。
- 健康・アレルギーの申告と医療の扱い、途中帰宅の手順と精算を参加契約に入れ、情報の提供先ごとに同意を取る。
結論:合宿の規約は「お金の流れ」と「夜の時間」から作る
塾の夏期合宿、冬の受験直前合宿、志望校の見学を兼ねた遠征は、授業の延長に見えて、通常の規約が想定していない要素が三つ加わります。宿泊、移動、そして夜の時間です。教室型の塾の規約は、塾が生徒の安全を管理する範囲を「入室から退室まで」と書くのが一般的ですが、合宿ではその前提が成り立ちません。
合宿の参加規約で最初に決めることは、次の四つです。
- 宿泊とバスなどの移動を、だれがだれと契約し、代金をだれが受け取るか(旅行業法の線引き)。
- 参加費の中身と、取消し・中止・途中帰宅のときの精算。
- 集合から解散までのうち、塾の講師が何をするか(引率の責任の範囲)。
- 健康・アレルギー・緊急時の情報と、その使い方についての同意。
一つ目が決まらないと、二つ目の「参加費に何を入れてよいか」が決まりません。三つ目の「夜に何をするか」を書かなければ、事故が起きたとき、塾が何をしていたはずなのかが説明できません。以下は一般的な参加規約の書き方の整理であり、特定の塾の運用を示すものではありません。旅行業法の定義や登録の手続そのものは、教室・イベント向けの別の解説でも扱っているため、ここでは塾の合宿への当てはめに絞ります。
通常授業の規約の作り方は塾の利用規約の作り方、教室内の事故の責任は安全・事故と免責のページで扱っています。このページは、宿泊を伴う行事で新しく必要になる部分だけを書きます。
塾の合宿は旅行業法の対象になるのか?
宿泊や貸切バスの手配を塾が引き受け、報酬を得て、事業として繰り返し行っていれば、旅行業に当たりうる、というのが入口の考え方です。規約に「当塾は旅行業者ではありません」と書いても、手配とお金の流れが変わらなければ判断は変わりません。旅行業法は、旅行業を営むには登録を受けなければならないと定めており、登録は観光庁長官または都道府県知事が行います。
判断の材料は、観光庁の旅行業法施行要領(平成17年国総旅振第386号、令和元年9月14日最終改正)と、旅行業の取扱いについての観光庁の通知(令和2年12月11日観参第957号)です。合宿に関わる要点は次のとおりです。
- 運送サービスは、鉄道・バス・船舶・飛行機・タクシーなど、対価を得て旅客を運送するサービスです。宿泊サービスは、旅館業や住宅宿泊事業として提供される、対価を得て人を宿泊させるサービスです。レンタカー、乗馬体験などの観光アクティビティ、テントサイトだけのキャンプ場は、運送でも宿泊でもない「運送等関連サービス」とされています。
- 報酬は、手配によって経済的収入を得ていれば足ります。旅行者から金員を取らなくても、宿泊施設から割戻しを受けていれば報酬と認められます。包括料金で取引され、収支の内訳が明確でなく、支出を償えていないことが明らかでない場合は、利益が出ているものとみなされます。
- 事業かどうかは、対価の設定、募集の範囲、反復継続して実施されるかなどから総合的に判断されます。手配を行う旨の宣伝・広告を日常的にしていれば、反復継続の意思が認められる例とされています。
施行要領は、留学あっせんと宿泊・運送の対価を包括して徴収し、不可分一体で手配している場合を、報酬を得ている例に挙げています。指導と宿泊を一つの「合宿費」にまとめ、宿泊先も塾が予約する形は、この例に近づきます。
塾の合宿を旅行業法の入口に当てはめる(公表資料で確認できる範囲)
- STEP1
宿泊または運送(バス・鉄道など)が含まれていますか。
はい次の段へ進みます。いいえ会場での授業、食事、観光アクティビティだけの手配であれば、運送・宿泊の手配は含まれず、旅行業の入口には立ちにくくなります。 - STEP2
宿泊施設やバス会社との契約を、塾が参加者のために代理・媒介・取次ぎしていますか。
はい次の段へ進みます。名義が塾でも、参加者の代わりに予約して代金を集める形は、取次ぎに近づきます。いいえ参加者が宿泊施設やバス会社と直接契約し、塾は日程の案内と指導にとどまるなら、手配の行為から外れる余地があります。 - STEP3
手配に関して収入を得ていますか。参加費への上乗せ、手数料、宿泊先からの割戻し、指導と宿泊を包括した料金で内訳が示せない場合を含みます。
はい報酬と見られます。次の段へ進みます。いいえ手配に関する収入が一切なく、内訳で示せるなら、報酬の要件から外れる余地があります。 - STEP4
不特定多数に向けて、反復継続して行っていますか。
はい四つがそろうと、登録を受けずに行えば無登録営業となります。いいえ在籍生に限った一回限りの行事であれば、事業性の評価は下がります。ただし継続の意思は事実で決まります。
自塾の施設に泊める場合は、宿泊を自ら提供することになり、手配の問題とは別に、対価を得て人を宿泊させる場合の規制(旅館業法など)が問題になりえます。規約より前に、所管の窓口で確認してください。
実務では、組み方は大きく三つに分かれます。それぞれで、規約と案内に書くことが変わります。
合宿の三つの組み方と、規約に書くこと
| 組み方 | 申込みと代金 | 旅行業法での見え方 | 規約・案内に書くこと |
|---|---|---|---|
| A 参加者が宿泊先・バス会社と直接契約し、塾は指導と日程の案内のみ | 宿泊・移動の申込みと代金は、参加者と提供事業者の間で完結する。 | 塾が手配(代理・媒介・取次ぎ)をしなければ、入口に立たない方向。 | 塾は宿泊・移動を手配しないこと、予約と取消しは各自が提供事業者へ行うこと、塾は提供事業者から割戻しを受けないこと。 |
| B 登録を受けた旅行業者が旅行部分を企画・実施し、塾は教育部分を担当 | 旅行代金は、旅行業者が参加者から直接受け取る。 | 塾が申込みの受付と代金の受領をしないことが前提。名義だけ借りる形は無登録営業になりうる。 | 教育部分と旅行部分の定義、旅行業者の名称と登録番号、旅行代金の支払先を旅行業者とすること。 |
| C 塾が宿泊先とバスを予約し、指導費と合わせた合宿費として一括徴収 | 塾が受け取り、塾が提供事業者へ支払う。 | 手配と報酬と事業性を検討する形。登録なしでは、規約の書き方で解消できない。 | この形のまま書き分けるのは難しいため、AまたはBに組み替える。 |
募集の仕方にも線引きがあります。施行要領は、旅行業者以外で募集に関わる者を「オーガナイザー」と呼び、次のように整理しています。
- オーガナイザーが自分の名で旅行契約を結べば無登録営業になります。旅行業者の名で契約する形でも、オーガナイザーが申込みを受け付けて旅行代金を受け取れば、無登録営業になります。
- 相互に日常的な接触のある団体の内部で参加者を募り、オーガナイザーがその構成員であることが明らかな場合(例として「学校等により生徒を対象として募集する場合」)は、旅行業者が引き受けて差し支えないとされています。塾の在籍生が同じ扱いになるかは、施行要領は述べていません。日常的な接触と構成員であることという実態で見られるため、塾の名前だけでは決まりません。
- それ以外の場合は、旅行業者が直接に旅行者から代金を受け取って契約する形になります。体験参加として外部の生徒を募る合宿は、この形に近づきます。
志望校の見学を兼ねた貸切バスや日帰りの遠征も、運送を手配して代金を集める点では同じ入口に立ちます。旅行業法には、無登録で旅行業を営んだ場合の罰則が定められています。
合宿の参加契約と参加費は、通常の月謝契約とどう分けるか?
合宿は、通常授業の契約とは別の「参加契約」として成立させ、参加費を「指導」と「宿泊・食事・移動」に分けて示します。季節講習の条に「申込み後のキャンセルは所定のキャンセル料、開始後は返金しない」という趣旨の一文があるだけの規約が見られますが、宿泊先の予約が絡む合宿には足りません。
参加契約の成立と参加費の区分
保護者が申し込み、塾が承諾の通知を出した時に成立する形にすると、定員や最少催行人数の判断と合わせやすくなります。通常の契約との関係も書きます。通常の契約を合宿の前に解約したとき、参加契約まで当然に終わるのか、取消料の対象にするのかが決まっていないと、精算で揉めます。契約当事者を保護者とする基本は保護者と未成年者のページのとおりです。
条文例参加契約の成立と参加費(新たに書き起こした条文例)
1合宿への参加は、保護者が当塾所定の方法で申し込み、当塾が承諾の通知を発した時に、参加契約として成立する。参加契約は、通常授業に係る利用契約とは別の契約とする。
2参加費は、指導費(合宿期間中の授業、自習の指導及び引率に係る費用をいう。)と、宿泊等の費用(宿泊、食事及び移動に係る費用をいう。)に区分し、募集要項に、各区分の金額、支払先及び支払時期を記載する。
宿泊等の費用の「支払先」は、前の章のA・B・Cのどれを選ぶかで書き分けます。Aなら提供事業者、Bなら旅行業者です。
参加費を区分して示すことは、旅行業法の面だけでなく、取消料の設計にも効きます。引率する講師の交通費・宿泊費は、指導費に含めるのか、参加者数で按分する実費として別に掲げるのかも決めて、募集要項に書いておきます。
通常の契約が特定継続的役務提供に当たる塾では、合宿を通常契約の追加として申し込ませるのか、別の契約にするのかで、通常契約を中途解約するときに合宿費を精算の対象に含めるかが変わります(中途解約と返金のページ)。季節講習の位置づけは月謝・入塾金・教材費のページで扱っています。
取消料は「戻らない固定の費用」と「時期で増える費用」に分ける
取消料は、消費者契約法9条1項1号により、解除の事由・時期などの区分に応じて、同種の契約の解除に伴い事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える部分が無効になります。同条2項は、算定根拠の概要を、説明を求められたときに説明するよう努めることも求めています。宿泊を伴う行事は、宿泊先とバスの取消規定が時期ごとにすでにあるため、根拠が最も見えやすい契約です。
取消料の区分の組み立て方(区分は仮の例)
| 取消しの時期 | 取消料の中身 | 根拠にする費用 |
|---|---|---|
| 宿泊先の無料取消しの期限まで | かけない。または、準備済みの実費だけ。 | 提供事業者への支払がまだ確定していない。 |
| 宿泊先の取消料が発生し始めてから | 提供事業者が塾または参加者に請求する取消料の実額の範囲。 | 宿泊先・バス会社の取消規定。写しを保管する。 |
| 直前(前日など) | 上の実額に、準備済みの教材・資料の実費を加える。 | 宿泊先の規定と、教材の購入記録。 |
| 当日・連絡なしの不参加 | 宿泊先等の取消料の全額に、準備済みの実費を加える。指導費の残りは、実施しない授業の分として戻す。 | 講師の人件費のうち欠席で増減しない部分まで含めると、説明しにくい。 |
Aの組み方(参加者が提供事業者と直接契約)なら、宿泊先・バスの取消料は参加者が提供事業者へ直接支払い、塾の取消料は指導費に関する部分だけになります。
数字を仮に置いて計算してみます(説明のための仮の数字です)。参加費は54,000円で、内訳は指導費24,000円と、宿泊・食事の費用30,000円です。宿泊先の取消規定が、8日前まで0%、7日前から2日前まで30%、前日50%、当日と不泊100%だとします。準備済みの教材・資料の実費は3,000円とします。
- 5日前に取り消した場合:宿泊・食事の費用30,000円の30%で9,000円、準備済みの実費3,000円を加えた12,000円が取消料です。払戻しは54,000円から12,000円を引いた42,000円です。
- 当日に取り消した場合:宿泊・食事の費用30,000円の100%と、準備済みの実費3,000円を加えた33,000円が取消料です。払戻しは21,000円で、実施しない授業の分の指導費が戻ります。
中止のときは、塾の責任の有無で精算を分ける
条文例合宿の中止(新たに書き起こした条文例)
1当塾は、最少催行人数に満たないとき、宿泊先が利用できなくなったとき、気象警報その他の事由により安全を確保して実施することが困難なときは、募集要項に定める日までに通知して、合宿の全部又は一部を中止することができる。
2前項により中止するときは、当塾は、受領した参加費のうち、実施しなかった部分に相当する額を、通知の日から◯日以内に返還する。当塾の責めに帰すべき事由による中止のときは、受領した参加費の全額を返還する。
3当塾の責めに帰すべき事由によらずに、宿泊先、運送事業者等から払戻しを受けられない費用が生じたときは、その費用(領収書等で金額を示すことができる実費に限る。)を限度として、第2項の返還額から差し引くことがある。
「不可抗力のときは塾が定める方法による」とだけ書くと、精算の額が塾の判断だけで決まる条項になります。責任の有無で分け、差し引く費用を実費に限ります。
引率講師の責任はどこまでか:集合から解散までを時間帯で区切る
引率とは、生徒を預かっている間、塾が見守り、人数の確認、連絡、応急の対応を行うことです。その範囲を、時間帯ごとに具体的に書きます。「引率スタッフが全行程に付き添います」とだけ書くと、実際には行わない見守りまで約束したように読まれます。
塾の責任の根拠は、いくつか重なります。保護者との契約に基づき、生徒を預かっている間の安全に配慮する義務を負うと見られ、事務の委託に近い契約として報告も求められます(民法656条・645条)。年齢が低く、自分の行為の責任を理解できないとされる子どもが他の子にけがをさせた場合は、親権者だけでなく、これに代わって子どもを監督していた者も賠償責任を負いえます(民法714条1項・2項)。引率する講師を雇用している場合は、講師が事業の執行について第三者に加えた損害を、塾が使用者として賠償する責任が問題になります(民法715条1項)。業務委託の講師でも、塾の指揮を受けて動いていれば同じ問題になる余地があります。
合宿の1日を時間帯で区切り、塾が行うことを書く
書いたのに行わなかったことが、責任の問題になります。
合宿で特に争いになりやすいのは、夜の時間です。宿泊を伴う業務の委託契約には、宿泊を伴う業務なので就業時間外の事故は一切責任を負わない、という趣旨の定めを置く例があります。生徒を預かる塾の合宿にこの書き方を移すと、最も事故が起きやすい夜の時間を、塾が管理しない時間として規約に書くことになります。
しかも、軽い過失の場合まで責任を全部免除する条項は、消費者契約法8条1項1号・3号により無効とされるおそれがあります。「故意又は重大な過失による場合を除き責任を負わない」という書き方でも同じです。上限を置くなら、「当塾、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失による場合を除き」という限定を、上限を定める一文の中に書き、軽い過失にだけ適用されることを明らかにします(同条3項)。生徒の生命・身体の損害は、上限の対象から外しておくのが穏当です。詳しくは安全・事故と免責のページに整理しています。
条文例合宿中の管理の範囲(新たに書き起こした条文例)
1当塾が生徒の安全について管理を行う範囲は、募集要項に記載した集合の時から解散の時までとし、夜間及び自由時間を含む。
2当塾は、前項の範囲において、集合時、移動の前後及び就寝前に人数を確認し、就寝後は、募集要項に定める間隔で見回りを行い、生徒から体調不良その他の申出があったときは直ちに対応する。
3引率する講師は、生徒と、他の者の目の届かない閉じた空間で一対一にならないよう努める。生徒の居室に入るときは、原則として複数名で入り、その理由と時刻を記録する。
4前3項の定めがあることは、当塾に責任がある場合に、当塾が参加者の損害を賠償する義務を免れる理由にならない。
子どもを守る条:部屋割り、被害の申出、スマートフォン
部屋割りは男女で階またはフロアを分け、部屋の行き来のルールを案内に書きます。いじめ、暴力、性的な言動などの被害の申出があったときは、直ちに事実を確認し、安全を確保して保護者に連絡する、という手順も定め、申出の相手が引率の講師である場合に備えて、塾の外にも申し出られる連絡先を案内に載せます。
スマートフォンを預かる運用は、保護者の同意を取り、預かる時間帯、緊急時の連絡手段、返却の時刻、預かり中の紛失や破損の扱いを書きます。預かった物の紛失は一切責任を負わないと書くと全部免除の問題になりうるため、塾の責めによる紛失は賠償する、と分けて書きます。
規律違反と途中帰宅は、手順と精算を分けて決める
- 規律に反する行為があったら、まず講師が注意し、その場で記録する。
- 改善しないとき、または危険を伴う行為のときは、保護者に連絡して状況を伝える。
- 参加の継続が難しい場合は、保護者と協議し、迎えの方法と時刻を決める。迎えが夜間・遠方のときは、迎えが来るまで生徒を一人にしない。
- 重大な場合(他の生徒への暴力、宿泊先の安全を脅かす行為など)は、協議を待たず途中帰宅とし、事後に保護者へ説明する。
途中帰宅の精算は、体調不良など塾が判断した場合、規律違反の場合、家庭の事情の場合のどれでも、前の章の取消料の仕組みで精算します。迎えに来る交通費は保護者の実費負担とし、実施しなかった授業の指導費は戻します。迎えの手配を保護者に依頼してよい範囲を決めておくと、夜間の対応で揉めません。
健康・アレルギー・緊急時:申告のとり方と医療の扱い
合宿では、申告を求める項目、使う目的、伝える相手を分けて、申込みの時点で同意を取り、緊急時の動き方を先に書いておきます。病歴や服薬の情報は、個人情報保護法で特に配慮を要する「要配慮個人情報」に当たりえます。要配慮個人情報は、あらかじめ本人の同意を得ずに取得してはなりません(同法20条2項)。人の生命・身体・財産の保護のために必要で、同意を得ることが困難なときの例外(同項2号)は、緊急の場面のためのもので、申込みの時点で集める根拠にはなりません。
申告を求める項目と、使う目的・伝える相手
| 申告を求める項目 | 使う目的 | 伝える相手(最小限) |
|---|---|---|
| 食物アレルギー、食事の制限 | 食事の提供、緊急時の対応 | 宿泊先の調理担当(必要な範囲)、引率の責任者 |
| 持病、服薬、発作の既往 | 体調急変時の対応 | 引率の責任者、救急隊・医療機関(治療に必要な範囲) |
| 乗り物酔い、睡眠、集団生活での配慮 | 移動中の座席、部屋割りの配慮 | 引率の担当者 |
| 緊急連絡先、かかりつけ医、加入している医療保険を確認できる書類の写し | 緊急時の連絡と受診 | 引率の責任者 |
目的ごとに提供先を分けておけば、講師全員に情報が広がることを避けられます。宿泊先や医療機関への提供は、あらかじめ本人(生徒の場合は保護者)の同意が必要です(同法27条1項。生命・身体の保護のために必要で同意を得ることが困難なときは例外、同項2号)。詳しくは塾のプライバシーポリシーのページで扱っています。
申告があった生徒を受け入れられるかどうかは、個別に協議します。除去食を出せない宿泊先なら、食事を持参してもらう、保護者が同伴する、主治医の指示書をもらう、といった条件を提示します。条件が整わず、塾が安全に受け入れられないと判断したときは、取消料なしで参加契約を終了できると書いておくと、双方に不利益がありません。
服薬は、医療行為にあたるような介助を塾の業務に含めないと決めておくのが基本です。合宿でも、薬の名称、量、時刻、保管方法を保護者が書面で示し、生徒が自分で服用するのを見守る範囲にとどめる、と書く方法があります。
条文例緊急時の対応(新たに書き起こした条文例)
1生徒に急な病気、けがその他の緊急の事態が生じたときは、当塾は、応急の措置をとり、必要と判断したときは救急車の出動を要請し、又は医療機関へ搬送する。
2当塾は、前項の措置と並行して、直ちに保護者に連絡する。保護者に連絡がつかないときは、申込書に記載された他の緊急連絡先に連絡する。
3当塾は、医療機関に対し、申告された健康に関する情報のうち、治療のために必要な範囲に限って伝えることができる。
4診察、治療及び搬送に要した費用のうち、公的医療保険の自己負担分その他の保護者が負担すべき費用は、保護者が負担する。ただし、当塾の責めに帰すべき事由による場合は、この限りでない。
手術や入院など、治療方針の決定は保護者に確認する前提で書きます。塾が保護者に代わって同意すると書くことは避けます。
宿泊先・バス会社・保険・引率する講師との契約
参加規約の内側で責任を分けても、塾が外部と結ぶ契約が噛み合っていなければ、事故のときに責任の行き場がなくなります。宿泊先、バス会社、会場、保険、引率する講師の五つを確かめます。
- 宿泊先:人数変更の期限と取消規定、館内の利用規則(消灯時間、大浴場の使い方)、アレルギー対応の可否、夜間の出入口と非常口の確認、備品を壊したときの扱い。
- バス会社:キャンセルの規定、遅延や運休のときの扱い。
- 会場を借りる場合:利用人数の上限に講師を含めるか、準備と片付けの時間を利用時間に含めるか、キャンセルの期限、事故を借りる側の責任と費用で対応するか。
- 保険:施設の欠陥による事故に備える施設賠償責任保険、塾の過失で他人にけがをさせた場合に備える賠償責任保険、生徒自身のけがに備える傷害保険は、役割が違います。どの事故をどの保険で受けるか、だれが加入し、加入を示す資料をどこに出すかを決めます。
留学の支援サービスの契約には、宿泊施設などの第三者の対応について「一切責任を負わない」と定める例があります。塾の合宿でも、宿泊先の設備の欠陥まで塾が負うわけではありませんが、塾が宿泊先を選び、利用の仕方を指示した部分は別です。非常口、夜間の体制、アレルギー対応を選ぶ段階で確かめた記録があれば、塾が果たすべき確認を示せます。「第三者の対応には責任を負わない」と一括りにせず、塾の選定と指示による部分は除く、と書き分けます。
引率する講師やアルバイトとの契約は、参加規約と整合させます。参加規約で「夜間は見回りを行う」と約束したのに、講師との契約に夜間の業務が書かれていなければ、約束が履行できません。業務委託で個人の講師に依頼する場合は、給付の内容、報酬の額、支払期日などを、書面または電磁的方法で明示する必要があります(フリーランス法3条)。宿泊中の拘束時間の扱い、夜間の待機に対する報酬、交通費・宿泊費の負担、生徒との私的な連絡の禁止、事故のときの保険と責任は、塾講師との業務委託契約書のページで扱う項目に、合宿用の別紙として足します。
よくある失敗と直し方:誤った条項から整えた条項へ
書き方の例(一般的な例) 合宿の参加規約
夜間・自由時間の事故
なぜ変えるか軽い過失の場面で責任を全部免除する条項は、消費者契約法8条1項1号・3号により無効とされるおそれがある。
途中帰宅
なぜ変えるか取消料の定めと「返金しない」の定めが並ぶと、全額を取り上げる違約金として、消費者契約法9条1項1号の平均的な損害を超えるおそれがある。
健康の申告
なぜ変えるか「一切責任を負わない」は全部免除に当たる。申告を受けた塾の対応義務を書くほうが、事故のときの説明にも使える。
旅行業法
なぜ変えるか取次ぎは旅行業の行為として挙がっている。何と名乗るかではなく、申込みの受付と代金の受領を塾が行うかで見られる。
ヒヤリングで確認すること:合宿の規約を作る前に
あらかじめ確かめること 合宿・遠征の参加規約のために
宿泊先とバスは、だれの名義で予約し、代金はだれが受け取って、だれに支払いますか。
旅行業法の線引きの出発点です。A・B・Cのどの組み方になっているかが、参加費の定義と取消料の設計を決めます。
合宿に参加できるのは在籍生だけですか。体験参加の外部の生徒も募集しますか。年に何回、どの範囲に宣伝しますか。
団体内部の募集に当たるか、反復継続の意思があるか、という事業性の判断材料です。
参加費を、指導費と宿泊・食事・移動に分けて示せますか。宿泊先やバス会社から、紹介料や割戻しの約束はありますか。
包括料金で内訳が示せない場合や、割戻しがある場合は、報酬と見られる材料になります。取消料の区分にも使います。
宿泊先とバス会社の取消規定(無料の期限、時期ごとの取消料)は、書面で確認できますか。
取消料の根拠を説明できる状態にするためです。
引率者は何人で、塾の社員、アルバイト、業務委託の講師のどれですか。夜間の見回りは、だれが何時に行いますか。
管理の範囲、使用者としての責任、講師との契約の項目に直接関わります。
夜間と自由時間に、塾が実際に行うことは何ですか。スマートフォンは預かりますか。
規約に書いたことを実際に行えるかを確かめるためです。
健康・アレルギーの情報は、だれまで共有しますか。受け入れられない場合の基準はありますか。
目的ごとの提供先と、同意の取り方を決めるためです。
よくあるご質問
塾の合宿は、旅行業の登録がないと実施できませんか?
宿泊や貸切バスの手配を引き受け、報酬を得て、事業として繰り返し行うと、旅行業に当たりうるとされています。参加者が宿泊先やバス会社と直接契約し、塾は指導と日程の案内にとどまる形や、登録を受けた旅行業者が旅行部分を企画・実施し、代金を旅行業者が直接受け取る形なら、塾が登録なしで実施できる余地があります。実際に当たるかは、手配の内容と代金の流れで判断されます。
宿泊費やバス代を実費で精算していれば、報酬にはなりませんか?
実費かどうかだけでは決まりません。施行要領は、手配によって経済的収入を得ていれば報酬になり、宿泊先から割戻しを受けた場合も報酬と認められるとしています。指導と宿泊を包括した料金で、収支の内訳が示せない場合は、利益が出ているものとみなされます。参加費を指導費と宿泊等の費用に分け、費用ごとの根拠を示せるようにしておきます。
「自由時間や就寝中の事故は責任を負わない」と書くことはできますか?
軽い過失の場合まで責任を全部免除する条項は、消費者契約法8条1項1号・3号により無効とされるおそれがあります。故意・重過失を除くと書いても同じです。管理の範囲を集合から解散までと定め、夜間の点呼・見回りのルールを書き、賠償の上限を置くなら、故意・重過失を除くことを上限の一文の中に明らかにします。
規律違反で途中帰宅になった生徒の参加費は、返金しなくてよいですか?
「返金しない」と書くと、取消料の定めと並んで、全額を取り上げる違約金と評価されるおそれがあります(消費者契約法9条1項1号)。途中帰宅を取消しの仕組みで精算し、実施しなかった授業の指導費を戻し、迎えの交通費は実費で保護者に負担してもらう形にします。
合宿のために集めた健康・アレルギーの情報を、宿泊先に伝えてよいですか?
病歴や服薬の情報は要配慮個人情報に当たりえます。取得にはあらかじめ本人(生徒の場合は保護者)の同意が要り、宿泊先や医療機関への提供にも同意が要ります。申込みの時点で、項目、使う目的、伝える相手を分けて同意を取ります。緊急時に同意を得ることが困難な場合の例外はありますが、申込みの時点で集めるための根拠にはなりません。
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本ページは一般的な情報提供です。特定商取引法・消費者契約法・個人情報保護法などの運用は、所管の行政機関の解釈や個別の事情によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 特定商取引法ガイド(消費者庁) / 個人情報保護委員会 / 裁判所ウェブサイト